福祉型の家族信託のスキーム3

福祉型の家族信託には、①高齢者などに代わっての管理処分機能、②親亡き後・伴侶(配偶者)亡き後の財産承継と管理処分機能、③民法などでは対処できないケースについてニーズがあるとされています。

配偶者の亡き後の財産承継と管理処分機能としては、自分が存命のときは自分の財産を自分のために使って、自分が亡くなったときは配偶者のために自分の財産を使って配偶者を支援することを可能なものとするものです。自分が亡くなった後に、残された配偶者には安心して生活を送れるようにしたいという想いに対しては、家族信託を活用することで応えることが可能です。そのための家族信託のスキームは、次の通りです。

委託者をA、第一次受益者をA、第二次受益者を配偶者B、受託者を親族(または専門職)Cとします。また、信託の終了期間は、AとBが死亡したときまでとします。これにより、Aが死亡したときには信託は終了せず、第二次受益者であるBのために信託財産が承継され、Bのために信託財産が管理処分されることが可能となります。このような内容の信託を「遺言代用信託」といいます。

Aの預貯金を信託財産とします。信託財産とする預貯金はその一部だけでもよいでしょう。

Bが認知症などによって判断能力が低下した場合に備えて、Bの利益を守るために受益者代理人を指定しておくとよいでしょう。

信託終了時の残余財産の帰属権利者として、A及びBの相続人に法定相続分の割合で帰属させる旨を定めておきます。これにより、信託財産とされたAの財産を円滑に承継させることが可能となります。

ただ、Bが認知症などによって判断能力が低下した場合において、Bのために身上保護に関する事務をしたり、信託財産以外の財産について管理処分をしたりするには、家族信託の活用だけでは対応することができません。そこで、このような場合に備えるには、信託契約と併せて任意後見契約を締結しておくという方法が有用であると考えられます。

(司法書士・行政書士 三田佳央)