福祉型の家族信託のスキーム6

福祉型の家族信託には、①高齢者などに代わっての管理処分機能、②親亡き後・伴侶(配偶者)亡き後の財産承継と管理処分機能、③民法などでは対処できないケースについてニーズがあるとされています。

民法などでは対応できないケースとしては、ⓐ幼い孫のために生命保険金を管理しながら孫の学資として必要な時期に必要な支払いができるようにしたい場合、②知的障害や精神障害のため財産管理ができない子や孫のために、生命保険金を管理して、生活費や療養費のために支払いを定期的にあるいは随時にできるようにしたい場合、ⓒ生命保険金を活用して、自分が選んだ公益団体や被災地に生命保険金を一定期間分割して寄付したい場合、ⓓ子や孫のために生活費などを定期的に支払い、修学を終えれば残金を自分が指定する公益団体に寄付したい場合などです。民法が定める遺言によってこれらのニーズに応えることが難しいでしょう。そこで、生命保険信託を活用する方法が考えられます。

生命保険信託とは、所有する財産ではなく、作り出される保険金を信託財産として信託の管理機能を活用するものをいいます。万一に備えての保険契約による死亡保険金請求書を信託財産とし、受け取る保険金を管理して家族の生活などのための福祉型信託として活用できるのです。

最近では、外資系の生命保険会社であるプルデンシャル生命が生命保険信託の商品を販売しています。この生命保険信託におけるスキームは、次のとおりです。

まず、保険金を預ける者(保険契約者兼被保険者)を委託者、その子や孫などを受益者とします。場合によっては、第二次受益者・第三次受益者を指定します。次に、プルデンシャル生命のグループ会社であるプルデンシャル信託を受託者とし、保険契約者の子孫や自分が選んだ公益団体などを残余財産の帰属権利者とします。これにより、自分が亡くなった後に、生命保険金を管理し、自分の子孫の生活費や療養費として活用することや、自分が選んだ公益団体や被災地のために活用することが可能となります。

この生命保険信託の手続の流れは次のとおりです。まず、プルデンシャル生命との間で、生命保険契約を締結します。次に、プルデンシャル信託との間で、信託契約を締結します。そして、契約者が死亡したときには、プルデンシャル生命から受託者であるプルデンシャル信託に対して、保険金が支払われます。その後、その保険金は信託財産となり、受託者が管理し、信託契約の内容に従って受益者に交付します。

これまで述べてきたように、信託には今までそのニーズに応えることが難しかった事例について、そのニーズに応えることを可能なものとすることができます。しかし、信託はその仕組みが複雑でそのスキームを構築することが難しいです。そこで、家族信託について相談したいという方は、弁護士や司法書士などの専門家に相談されることをお勧めします。愛知県一宮市で家族信託に取り組んでいる当事務所(「司法書士・行政書士 三田事務所」)にも、お気軽にご相談ください。

(司法書士・行政書士 三田佳央)