特別養子縁組の成立要件

(1) 養子の要件

特別養子縁組によって養子となることができるのは、家庭裁判所への申立て時に15歳未満の者に限られます。養子となる者の年齢の上限を15歳未満としたのは、①遅くとも義務教育期間中には、特別養子縁組が成立するように申立てを促すため、②特別養子縁組が未成年者の養育のための制度であることから、特別養子縁組の成立後にある程度の養育期間を確保する必要があるから、③15歳以上の者は、自らの意思で普通養子縁組をすることができるので、自らの意思によらず家庭裁判所の審判によって縁組を成立させるのは原則として不適当だからです。

養子となる者が15歳に達する前から引き続き養親となる者に養育されている場合において、15歳に達するまでに家庭裁判所への申立てがされなかったことについてやむを得ない事由があるときは、15歳以上であっても養子となることができます。これは、子が15歳に達している場合であっても、例外的に、特別養子縁組を成立させて安定的な家庭環境の中で養育すべき例があるからです。養親となる者に引き続き養育されている場合であれば15歳に達していても養子となることができるとしたのは、このような場合には、養親となる者と養子となる者との間に事実上の親子関係が形成されていることがあると考えられるからです。15歳に達するまでに家庭裁判所への申立てがされなかったことについて「やむを得ない事由があるとき」に限り、特別養子縁組の成立を認めているのは、なるべく早期に親子関係を確定させることが子の利益にかなうことから、養親となる者に早期の申立てを促すためです。このことから、「やむを得ない事由があるとき」に該当するのは、相当限定的に解釈すべきであると考えられているようです。なお、「やむを得ない事由があるとき」に該当するか否かの判断は、最終的には家庭裁判所の判断に委ねられています。

ただし、特別養子縁組が成立するまでに18歳に達した場合には、養子となることができません。特別養子縁組は、未成年者を養育するための制度であり、18歳に達し成年になった者について特別養子縁組を成立させることは制度の趣旨に沿わないからです。

養子となる者が特別養子縁組の成立した時点で15歳に達している場合は、その者の同意が必要です。15歳に達している者は、自らの意思で普通養子縁組を成立させることができることから、特別養子縁組においても、その者の自己決定を尊重するため、その者の同意がなければ成立しないとされたのです。

(2) 養親の要件

① 夫婦共同縁組

養親となる者は、配偶者のある者でなければなりません。そして、夫婦が共同で縁組をしなければなりません。特別養子縁組は、実の親子関係を形成して未成年者を養育するための制度であるので、夫婦が共同で縁組をすることが求められています。ただし、夫婦の一方が他方の子の養親となる場合は、その一方の者との間だけで縁組をすることができます。しかし、夫婦の他方の子が、その他方の婚姻関係にない者との間に生まれた子(非嫡出子または婚外子といいます)である場合や、その他方と普通養子縁組をしている養子である場合は除かれます。他方の婚姻関係にない者との間に生まれた子である場合が除かれているのは、このような子においては、特別養子となることにより夫婦の子という地位となり、法的地位が改善し、安定的な家庭環境の中で未成年者を養育するという制度の趣旨に沿うことになるからとされています。また、普通養子縁組の場合が除かれているのは、縁組の効果や離縁の要件・方式が特別養子とはその地位が異なるからであるとされています。

② 養親となる者の年齢

養親となる者は、25歳以上でなければなりません。ただし、夫婦の一方が25歳に達している場合には、他方は20歳に達していればよいとされています。これは、特別養子縁組の制度の趣旨から、実の親子関係を形成するにふさわしい年齢差が求められています。

養子となる者の年齢は原則として15歳未満でなければならず、例外的に18歳未満であればよいとされています。そうすると、養親となる者と養子となる者との年齢差がごく僅かになる場合が生じ得ることになります。この点については、家庭裁判所が、個別具体的な事案に応じて、特別養子縁組の制度の趣旨に照らして、養親となる者の適格性を総合的に判断する際に養子となる者との年齢差を考慮することになるとされています。

(3) 父母の同意

特別養子縁組は、養子となる者の父母の同意がなければ成立しません。特別養子縁組が成立すると、実父母と子との法律上の親子関係が終了するからです。ただし、父母が同意の意思を表示することができない場合(所在不明・心神喪失などです)や、父母による虐待・悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、父母の同意は不要です。

もっとも、以前は、父母の同意は特別養子縁組の審判が確定するまで撤回することができるとされていました。そのため、養親となる者が、実父母の同意がいつ撤回されるか分からないという不安を抱いたまま養子となる者の試験養育をしなければなりませんでした。

そこで、令和元年の家事事件手続法の改正により、第1段階の特別養子適格の確認の審判の手続等において、実父母が家庭裁判所における審問の期日等でした同意については、同意をした日から2週間が経過した後は撤回することができないこととされました。

(司法書士・行政書士 三田佳央)