福祉型の家族信託のスキーム5

福祉型の家族信託には、①高齢者などに代わっての管理処分機能、②親亡き後・伴侶(配偶者)亡き後の財産承継と管理処分機能、③民法などでは対処できないケースについてニーズがあるとされています。

民法などでは対応できないケースとしては、ほかにⓐ遠地の墓碑等の管理、本人亡き後の先祖等の霊を弔う永代供養を託したい場合、ⓑ老い先が心配な高齢者等が、生活の友であるペットを安心して飼うことができるように、飼い主が死亡しても後の面倒を見てもらえるようにしたい場合、などがあります。民法が定める遺言によっては、これらのニーズに応えることが難しいと言わざるを得ません。そこで考えられたのが「死後事務委任型信託」です。

死後事務委任型信託は、目的信託という形を取ります。目的信託とは、受益者の定めのない信託のことです。受益者の定めがないので、受益者のための信託ではなく、一定の目的の遂行のための信託スキームです。目的を人格のない動物・建物等の保護とする目的信託を、契約や遺言によって設定することができます。

本人・先祖の菩提を弔うための墓地・墓碑等の管理や法要等の供養料・墓地管理(永代供養)料を支払うことを目的とする信託は、永代供養信託と呼ばれています。これには、まず、受益者の定めのない信託(目的信託)により20年の信託期間とするスキームがあります。信託期間が20年とされているのは、目的信託の存続期間は、20年を超えることができないと定められているからです。このほかには、菩提寺等を受益者に定めるスキームも有効な方法であるとされています。

ペットの飼育やそれにかかる費用を支払うことを目的とする信託は、ペットの信託と呼ばれています。ペットの信託では、目的物であるペットの飼育のために、飼育者(飼育業者)を受託者と定めるスキームがあります。このほかには、飼育者を受益者と定めるスキームも可能とされています。いずれも、受託者は信託財産を管理し必要な資金を充当することになります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)