任意後見契約の終了4

任意後見契約の効力が生じた後に、本人が法定後見(補助・保佐・後見)の開始の審判を受けたときは、任意後見契約は終了します。任意後見人と後見人等(補助人・保佐人・成年後見人)の権限の重複・抵触を防止するためです(これに対し、任意後見契約の効力が生じる前に、本人が法定後見開始の審判を受けたときは、任意後見契約は終了しません)。

任意後見契約の登記がされている場合には、その契約の効力が生じているのか否かを問わず、原則として、法定後見の開始の審判をすることができません。

例外として、「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」に限り、法定後見開始の審判をすることができます。

「本人の利益のため特に必要がある場と認めるとき」とは、①本人が任意後見人付与した代理権の範囲が狭すぎるため、他の法律行為について代理権の付与が必要であるが、本人の精神の状況が任意に代理権を付与するのに困難な状態である場合、②本人について同意権・取消権による保護が必要な場合などです。

このほかに、③合意された任意後見人の報酬額が余りにも高額である場合、④任意後見受任者が本人に対し訴訟をしている、不正な行為をしているなど、任意後見を妨げる事由がある場合などが挙げられるとされています。要するに、任意後見契約によることが本人の保護に欠ける結果となる場合を意味するとされています。

任意後見契約の締結後に、本人の利益のため特に必要があると認めるときは、本人・配偶者・四親等内の親族・検察官は、その契約の効力が生じたか否かを問わず、法定後見開始の審判の申立てをすることができます。

また、任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人も、本人の利益のため特に必要があると認めるときは、法定後見開始の審判の申立てをすることができます。これは、任意後見の事務を担当する受任人やその監督者が任意後見による保護が限界であると判断する場合には、自ら法定後見への移行の手続を行うことが本人の保護に適していると考えられるからです。このように、任意後見から法定後見への移行の可能性が考慮されています。

(司法書士・行政書士 三田佳央)