任意後見契約の終了3

任意後見契約は、①本人・任意後見人(任意後見受任者)の死亡、②本人・任意後見人(任意後見受任者)が破産手続開始の決定を受けたとき、③任意後見人(任意後見受任者)が後見開始の審判を受けたときには、終了します。任意後見契約は、委任契約の一類型だからです。

なお、以上のほか、当事者間の約定により契約の終了事由を定めることもできます。例えば、任意後見人が弁護士である場合に、その弁護士が所属する弁護士会から懲戒処分を受けた場合などです。

任意後見人が死亡すると、上述したように、任意後見契約は終了することになります。任意後見契約の効力が生じる前であれば、本人には判断能力が備わっているので、若干の手間がかかるとしても、再度任意後見契約を締結することが可能です。しかし、任意後見契約の効力が生じている場合は、本人の判断能力が低下しているのであるから、再度の任意後見契約の締結は困難でしょう。

したがって、本人の利益を守るためには、法定後見(補助・保佐・後見)開始の審判の申立てをする以外に方法はありません。しかし、ここでは誰がこの申立てをするのかという問題が生じます。任意後見監督人は、法定後見開始の審判の申立てをすることができるとされていますが、任意後見人が死亡した場合は任意後見契約が終了しているので、任意後見監督人もその地位を失うことになり、この申立てをする権限もないことになるからです。

そのほか申立権を有する者としては、本人・配偶者・四親等内の親族・検察官・市町村長です。本人が判断能力を欠く常況にないのであれば、本人が自ら申立てをすることになるでしょう。

また、申立人がみつかったとしても、申立てから審判が確定するまでの間、数か月を要するので、本人はその利益を保護する者がいない状態におかれることになってしまいます。したがって、この場合には、審判前の保全処分を活用することが必要となるでしょう。審判前の保全処分とは、本人の財産管理等のため必要があるときは、家庭裁判所は、申立てまたは職権により、法定後見開始の審判の効力が生じるまでの間、財産管理人の選任等をすることができるという制度です。この場合においては、選任された財産管理人が本人の財産を管理することになります。

このような事態を防ぐためには、①複数の任意後見契約を締結する方法、②法人と任意後見契約を締結する方法が考えられるとされています。また、立法論としては、任意後見人の死亡により任意後見契約が終了した場合は、任意後見監督人であった者に、法定後見開始の審判の申立権を与えるといった仕組みを整備することが考えられるとされています。

(司法書士・行政書士 三田佳央)