特別養子縁組の概要

1 特別養子縁組とは

養子縁組をすることにより、養親と養子との間に人為的に法律上の親子関係が成立します。普通養子縁組は、実の親子関係を存続させたまま養親と養子との間に法律上の親子関係を成立させる制度です。これに対し、特別養子縁組は、実父母との法律上の親子関係を終了させ、養親と養子との間に実親子と同様の親子関係を成立させる制度です。

特別養子縁組は、実の親子関係を終了させるものなので、普通養子縁組と異なり、届出によって法律上の親子関係が成立するのではなく、家庭裁判所の審判により成立するものとされています。このことから、特別養子縁組は、実親からの子どもの取戻し請求を防ぐとともに、原則として離縁を認めず、養親との親子関係を安定させることを趣旨とした制度であるといえます。このような制度趣旨を達成するため、特別養子縁組には、次のような特徴があります。

2 特別養子縁組の成立要件

まず、その成立要件については、上述のように、家庭裁判所の審判により成立します。養親と養子には、年齢による制限が設けられています。養親の年齢は、原則として25歳以上であることを要します。養子の年齢は、原則として15歳未満であることを要します。また、養親は配偶者のある者でなければならず、夫婦が共同で縁組をすることを原則とします。これは、その制度の趣旨から、養親が夫婦であることと、親子にふさわしい年齢差であることが求められたのです。

さらに、実父母の同意がなければ、原則として特別養子縁組は成立しません。これは、特別養子縁組が成立すると、実父母との法律上の親子関係が終了するからです。

特別養子縁組は、養親となる者の申立てに基づいて家庭裁判所の審判により成立しますが、その際には、養親となる者が養子となる者を6か月以上の期間養育した状況を考慮されます。これを試験養育といいます。これは、無条件に養子となる者を愛するのかを確かめるための期間です。

家庭裁判所は、試験養育の状況を考慮し、父母による子の養育が著しく困難・不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のために特に必要があると認めるときに特別養子縁組を成立させます。実親子の法律上の親子関係が終了するため、特別養子縁組の成立には慎重な判断が必要とされます。

3 特別養子縁組の成立後

特別養子縁組が成立すると、養親と養子との間に法律上の親子関係が成立するとともに、実親子の法律上の親子関係が終了します。特別養子縁組は、原則として離縁することができません。このような仕組みが採用されているのは、特別養子縁組が、養親と養親との親子関係を安定させ、未成年の養子の保護を図る制度だからです。

(司法書士・行政書士 三田佳央)