任意後見監督人の職務2

任意後見監督人の職務としては、①任意後見人の事務を監督すること、②任意後見人の事務に関する報告を定期的に家庭裁判所にすること、のほかに、③急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること、④任意後見人やその任意後見人が代表する法人などと本人との利益が相反する行為について本人を代理すること、があります。

③にいう「急迫の事情」とは、任意後見人が不在・病気などによって任意後見人の事務を行うこができない状況にあるにもかかわらず、迅速な対応をしないと本人に損害を与えるおそれがある事務が存在する場合をいいます。

また、「必要な処分」とは、任意後見人の代理権の範囲内にある法律行為の代理行為とこれに付随する事実行為であるとされています。例えば、消滅時効の完成猶予、差押え、倒壊の危険のある家屋の解体などがあります。

このような場合には、任意後見人において本人の利益を保護することができないので、任意後見監督人が一種の法定代理人として本人の利益を保護するために事務を行うことが求められているのです。

④にいう任意後見人と本人との利益が相反する行為には、外形的・客観的に両者の利益が相反する行為が該当することになります。例えば、任意後見人が本人から財産の贈与を受ける場合、任意後見人の第三者に対する金銭債務について任意後見人が本人を代理して保証契約や抵当権設定契約を締結する場合、本人と任意後見人が共同相続人である状況において、任意後見人が本人を代理して遺産分割協議をする場合などです。

任意後見人が代表する法人などと本人の利益が相反する行為には、例えば、任意後見人が本人を代理して、任意後見人が代表する法人や任意後見人の親権に服する子と売買契約を締結する場合などがあります。

このような場合においては、任意後見人が自己の利益のためにその事務を行うおそれがあるので、任意後見人の代理権を制限し、任意後見監督人が一種の法定代理人として本人の利益を保護するために事務を行うことが求められているのです。

(司法書士・行政書士 三田佳央)