任意後見監督人の職務1

任意後見契約がその効力を生じるのは、精神上の障害により本人の判断能力が不十分な状況になった場合に、家庭裁判所への申立てによって任意後見監督人が選任されたときです。つまり、任意後見契約においては、任意後見監督人は必ず選任されることになります。

任意後見監督人の職務としては、①任意後見人の事務を監督すること、②任意後見人の事務に関する報告を定期的に家庭裁判所にすること、③急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること、④任意後見人やその任意後見人が代表する法人などと本人との利益が相反する行為について本人を代理することです。

①は、判断能力が低下した本人に代わって任意後見人を監督することにより、任意後見人の事務が適切に行われることを図り、その権限濫用を防止するためのものです。具体的には、任意後見人の事務処理や本人の財産・収支の状況などについて、任意後見人から定期的に報告と資料(出納帳・通帳・領収書など)の提出を受けて、事務処理が本人のために適切に行われているかどうかをチェックすることになります。

この監督事務を実効的なものとするため、任意後見監督人は、いつでも任意後見人に対して、その事務の報告を求めることや、その事務や本人の財産の状況を調査することができるとされています。任意後見監督人への報告の方法は、口頭または文書にて行うことになるでしょうが、任意後見契約に定められていればそれに従うことになります。実務では、定期的に報告をするように任意後見契約に定められていることが多いです(例えば、3か月ごとなど)。任意後見監督人による本人の財産の調査については、任意後見人の事務をチェックするために不可欠の調査事項であるとされています。実務では、任意後見人に対し、財産目録や収支予定表の提出を求めてこれを精査するという方法で対応することが多いようです。

②は、任意後見制度が任意後見監督人による任意後見人の事務の監督を通じて、家庭裁判所は間接的に任意後見人の事務を監督する仕組みとなっていることから、家庭裁判所への報告が義務付けられています。実務では、年1回の報告が求められています。この報告は、監督事務報告書・財産目録・収支予定表・通帳の写しなどを提出するという方法で行われています。

(司法書士・行政書士 三田佳央)