任意後見監督人の注意義務等

任意後見監督人は、その職務を行うにあたって、善良な管理者の注意義務をもって、その事務を処理する義務を負っています(善管注意義務といいます)。任意後見監督人は、本人に損害を与えることがないようにその職務を行わなければならないからです。任意後見監督人がこの善管注意義務に違反した結果、本人に損害を与えた場合には、任意後見監督人は損害賠償責任を負わなければなりません。

また、任意後見監督人がその職務を辞任した場合や、本人の死亡などにより任意後見契約が終了した場合において、急迫の事情があるときは、本人やその相続人が事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければなりません(善処義務といいます)。任意後見監督人が辞任した場合や、任意後見契約が終了した場合には、任意後見監督人の職務は終了することになりますが、急迫の事情があるときに、本人やその相続人が事務処理をすることができないにもかかわらず、任意後見監督人の職務が終了することを認めると、本人やその相続人に不測の損害を被らせるおそれがあるからです。

そのほか、任意後見監督人と本人との法律関係が終了したという事実は、相手方に通知したときか、相手方が知っていたときでなければ、その事実を相手方に主張することができません。任意後見監督人と本人との法律関係が終了する場合には、任意後見監督人が辞任した場合や、本人の死亡などにより任意後見契約が終了した場合などがあります。任意後見監督人の辞任や本人の死亡など任意後見監督人または本人のいずれか一方の側にその事実が生じたときには、その事実を知らない他方の側が不測の損害を被らないように配慮しなければなりません。したがって、任意後見監督人は、自己が辞任した事実を本人に通知しておかないと、その職務を行う義務の消滅を本人に主張することができないことになります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)