任意後見契約の終了1

任意後見契約が解除されると、任意後見契約は終了します。任意後見契約は、委任契約の一類型であるので、各当事者からいつでも解除することになります。

しかし、任意後見契約は公正証書によって締結されなければならないとされていることとの関係から、たとえ任意後見監督人が選任される前であっても、各当事者のみで任意に解除することができるとすることは、当事者の真意の確認・立証を確実なものとし、紛争を予防するという趣旨に反するおそれがあります。

また、任意後見監督人が選任され、契約の効力が発生した後においては、本人の判断能力が低下しているので、各当事者が任意で解除することができるとすることは、本人の保護に反する結果となるおそれがあります。

そこで、任意後見契約の解除については、その要件・方式に制限が設けられています。

まず、任意後見監督人が選任される前においては、本人・任意後見受任者は、公証人の認証を受けた書面によれば、いつでも任意後見契約を解約することができます。これは、任意後見契約の締結には、公正証書によらなければならないとされていることから、その解除をする際にも公証人を関与させることにより、当事者の真意に基づく解除であることを担保する必要があると考えられたからです。

実務では、解除の意思表示をした当事者は、公証人の認証を受けた解除の書面を相手方に送付したうえで、解除の意思表示とその到達を証する書面(例えば、配達証明付内容証明郵便など)を添付して、登記所(東京法務局)に対して終了の登記の申請を行うことになります。

次に、任意後見監督人が選任された後においては、本人・任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除することができます。

これは、任意後見契約の効力が発生した後においては、家庭裁判所の監督の下で本人保護の制度的仕組みの機能が開始した後なので、任意後見人からの自由な解除を認めることは、無責任な辞任を容認する結果となるおそれがあるからです。任意後見人による解除は、実質的には任意後見人の辞任に相当するものといえるからです。

また、判断能力が不十分な状況にある本人からの自由な解除を認めることは、本人が判断を誤ることにより自己の利益を害する結果となるおそれがあります。

なお、解除をするには、家庭裁判所による許可の審判を受けたうえで解除の意思表示をする必要があり、許可の審判により契約が終了するわけではありません。

実務では、解除の意思表示をした当事者は、家庭裁判所の許可を受けたうえで、解除の書面を相手方に送付し、解除の意思表示とその到達を証する書面(例えば、配達証明付内容証明郵便など)・許可の審判書の謄本・確定証明書を添付して、登記所(東京法務局)に対して終了の登記の申請を行うことになります。審判の確定証明書の添付が必要とされているのは、任意後見契約の解除についての許可の審判に対しては、本人・任意後見人が即時抗告をすることができ、即時抗告の期間が満了することにより、審判が確定しその効力が生ずることとされているからです。

(司法書士・行政書士 三田佳央)