任意後見人の報酬・費用

任意後見契約は、委任契約の一類型であることから、任意後見人が報酬を受けるには、任意後見契約の内容として任意後見人が報酬を受ける旨の特約を定める必要があります。実務では、親族以外の者が任意後見人になる場合には、報酬の特約が定められているのが通常です。報酬の定め方については、毎月支払われることになる定額報酬のみの場合と、定額のほかに特別の事務(例えば、施設入所事務・不動産処分事務などです)に対して支払われる報酬とに分けて決められる場合があります。親族が任意後見人になる場合には、報酬を無償とする契約がされることが多いでしょう。なお、相続権のない親族が任意後見人になる場合には、報酬の特約を定めておくこともひとつの方法であるとの指摘があります。

報酬は原則として後払いとされていますが、特約によってこれとは異なる定めをすることは可能です。例えば、翌月分を前月末日に前払いとすることなどです。

任意後見人が事務処理に要する費用については、本人に請求することにより前払いを受けることができます。また、任意後見人が費用を立て替えた場合には、本人にその費用と合わせて立て替えた日以後の利息も請求することができます。しかし、これらの点について、実務では、任意後見契約の内容として「任意後見人の事務処理に要する費用は、本人の財産から支弁する」などと定めることにより、本人に請求をすることなく、本人の財産から支出することが通常です。

また、任意後見人が事務処理をするのに必要と認められる債務を負担した場合は、本人に対し、その債務の弁済をすることを請求することや、相当の担保を提供させることができるとされています。

(司法書士・行政書士 三田佳央)