相続財産の処分時期と法定単純承認

被相続人が死亡した後に、相続人が相続財産の全部または一部の処分をすると、その相続人は相続を承認したものとみなされるため、その後に相続放棄をすることができなくなります。

では、相続放棄をした後に、相続財産の全部または一部を処分した場合には、その相続放棄の効力は認められないのでしょうか。相続を承認したとみなされる相続財産の処分は、相続放棄の前にされた処分のみを指すのか、それとも相続放棄の後にされた処分をも指すのかが問題となります。

この点について、古い判例は、相続放棄の前になされた処分のみを指すとしています。これは、相続人がいったん相続放棄をしたのならばその時点で相続放棄が確定するのであって、その後の処分を相続の承認とみなす余地はないからです。もし、相続放棄の後にした処分によって相続の承認とみなされるのであれば、その場合にはその相続放棄が無効となる趣旨の規定があってしかるべきでありますが、そのような趣旨を窺わせる規定は存在しません。そのような規定がないと、その相続放棄の効力をどのように扱ってよいのかが分からないからです。このことからしても、相続放棄の後に処分をした場合であっても、相続の承認をしたとみなされることはないといえるでしょう。

したがって、相続放棄の後にした相続財産の処分によって、その相続放棄の効力は影響を受けることはありません。

(司法書士・行政書士 三田佳央)