遺言代用信託と受益者連続信託について

家族信託において、委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託をすることができます。受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得するにあたっては、一定の事由の発生・期間の経過という条件を定めることができます。そこで、その事由を「委託者の死亡」としておけば、受益者となるべき者に受益権を遺贈するのと同様の効果をもたらすことができます。このような信託は、その効果に着目して、「遺言代用信託」と呼ばれています。

遺言代用信託においては、委託者は受益者を変更する権利を有するものとされています。これは、遺言については、遺言者の最終意思を尊重するため、いつでも撤回することができるとされており、また、死因贈与についても、遺言の撤回の規定が準用され、いつでも取消し可能とされているからです。

ただし、信託契約における別段の定めにより変更する権利を排除・制限することができます。変更する権利を排除することができるので、遺言や死因贈与と異なり、権利を安定させることができる点が重要だとされています。

また、家族信託においては、受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託をすることができます。例えば、受益権について、5年間はAに与え、その後、5年間はBに与えるといった信託契約の定めをすることも可能です。このような信託を、「受益者連続信託」といいます。

家族信託において、受益者連続信託を応用したものとして考えられたのが、「後継ぎ遺贈型信託」と呼ばれるものです。例えば、信託契約において、委託者が自己所有の土地建物を信託財産として信託を設定し、受益者Aの生存中はその土地建物に居住すること内容とする受益権をAに与え、Aの死亡時には、今度はBが同様の受益権を取得するという定めをするものです。ただし、このような定めによって委託者が受益者を延々と指定することを認めると、死亡した者が、自己の死亡後における財産の帰属の行方にあまりに大きな権限を有してしまうことになるし、特定の財産を不当に長期に拘束してしまうおそれもあります。そこで、受益者連続信託は、当該信託がされた時から30年を経過した以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで、または当該受益権が消滅するまでの間は有効であるとされています。

(司法書士・行政書士 三田佳央)