家族信託はいつ終了するのか

特定の財産が信託契約により信託の対象とすると、その財産は委託者の固有財産ではなくなり信託財産となります。信託財産となった財産については、委託者が死亡したとしても、相続により承継されることはなく、信託が終了した時に清算受託者(信託が終了した時以後の受託者のことです)により清算が行われ、その財産が残っていれば残余財産として信託契約において帰属権利者(信託契約において残余財産の帰属すべき者のことです)として指定された者に承継されます。では、信託契約は「いつ」「いかなる事由」で終了するのでしょうか。

まず、「いつ」信託契約が終了するのかという点については、信託契約の「信託の期間」の条項の中で「信託の期間の終了事由」として定めます。実務では、「受益者が死亡したとき」「信託財産が消滅したとき」などと定めることが多いです。このほかに、「本信託効力発生後30年間」などと定めることもできます。

次に、「いかなる事由」で信託契約は終了するのかという点については、信託契約において定める事由と信託法所定の終了事由があります。実務では、信託契約において、①信託の期間の終了、②信託当事者の信託終了の合意、③信託法所定の終了事由を定めることが多いです。

信託法所定の終了事由としては、①信託の目的を達成したとき、または達成することができなくなったとき、②受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき、③受託者が欠けた場合であって新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき、④信託が併合されたとき、⑤信託法の規定により信託の終了を命ずる裁判があったとき、⑥信託財産についての破産手続開始の決定があったとき、⑦信託契約において定めた事由が生じたときなどです。上記における、「信託の期間の終了」と「信託当事者の信託終了の合意による終了」は、⑦信託契約において定めた事由が生じたときに該当します。

このように、「信託の期間の終了事由」と「信託の終了事由」とは異なるものであるとされています。「信託の期間の終了事由」の中に、信託期間の満了事由以外の不確定要素である終了事由を含めるべきではないと考えられています。これは、「信託の期間の終了事由」の中に信託期間の満了事由以外の終了事由をも掲げて、帰属権利者の条項で「信託期間が終了した場合は、残余の信託財産をAに帰属させる」という定めをした場合に、信託期間以外の事由で信託が終了したときでも、指定された帰属権利者に財産が承継されることになり、帰属権利者Aには予想外の贈与税が課税されることもあり、信託契約当事者の意思に反する結果となるおそれがあるからです。このことから、信託の終了事由は、信託の期間や帰属権利者などの定めと関連させることが大事であるといえます。

(司法書士・行政書士 三田佳央)