家族信託における信託の変更

家族信託は、長期間にわたって続くことが想定されます。そうすると、信託契約で定めた条項の変更をする必要が生ずることがあり得ます。例えば、信託財産の管理方法・受託者の権限などです。ただ、まったく自由に変更することができるわけではありません。信託では、信託契約において委託者が目的を設定しますが、その目的そのものを変更されてしまうと、信託設定の意図が達成することができなくなってしまいます。受益者も、自らの受ける給付等が変わってくるような変更を勝手にされては困ってしまいます。また、受託者も、信託事務の内容が変更されると、その遂行に支障をきたすことも考えられます。そのため、信託契約の条項の変更を検討する際には、その変更が可能なのか・その変更が可能だとしても他の条項に与える影響などを慎重に吟味する必要があるでしょう。

また、信託法は、その変更する内容に応じて異なる変更方法を定めています。

委託者・受託者・受益者の合意によって信託の変更をすることができるのは当然です。

信託の目的に反しないことが明らかであるときは、受託者と受益者の合意によって信託の変更をすることができます。この場合には、委託者の利益に配慮する必要がないからです。委託者が存する場合にこの変更をしたときは、受託者は、遅滞なく委託者に通知しなければなりません。信託の目的に反しないことが明らかであるときとは、例えば、信託財産の運用方針を変更する場合などです。

信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるときは、受託者が単独で信託の変更をすることができます。この場合には、委託者だけでなく、受益者利益にも配慮する必要がないからです。委託者が存する場合にこの変更をしたときは、受託者は、遅滞なく委託者・受益者に通知しなければなりません。

受託者の利益を害しないことが明らかであるときは、委託者と受益者の合意によって信託の変更をすることができます。この場合には、受託者の利益に配慮する必要がないからです。この変更の合意をした場合には、その合意を受託者に伝えたときに変更されたことになります。なお、委託者が現に存しない場合は、この合意による変更はできません。

信託の目的に反しないこと及び受託者の利益を害しないことが明らかであるときは、受益者が単独で信託の変更をすることができます。この場合には、委託者・受託者の利益に配慮する必要がないからです。受益者が受託者にこの変更内容を伝えたときに変更されたことになります。

また、信託契約において別段の定めがあるときは、その定めるところによります。例えば、受託者と委託者の合意によるものとし、委託者の死亡後や判断能力の低下により意思表示ができない場合には、受託者と受益者との合意、もし受益者が意思表示できない場合には受益者代理人との合意によって信託を変更することができる旨の定めをする場合です。このような定めをすることにより、委託者が意思表示をすることができない場合であっても信託の変更をすることができ、また、受託者の独善によって信託の変更がされることを防ぐことができます。

(司法書士・行政書士 三田佳央)