家族信託と課税制度

家族信託は、本人(委託者)が認知症などにより判断能力が低下したとしても、信頼できる親族など(受託者)が、その信託の目的のために信託財産を管理・運用・処分することができ、また、その信託財産を円滑に承継させることを可能なものとします。ただ、家族信託には、課税が優遇されるような制度はありません。そのため、家族信託を利用する場合には、どのような課税がされるのかを検討する必要があります。

まず、信託契約をした場合における課税については、委託者が受益者である場合と、委託者以外の者が受益者である場合とで異なります。これは、信託における課税は、受益者に対してされるからです。そのため、委託者が受益者である場合には、課税されませんが、委託者以外の者が受益者である場合には、贈与税が課税されることになります。後者の場合は、受益者は委託者から信託財産を贈与により取得したものとみなされるからです。実務では、委託者とともに他の親族が受益者となることもあるので、その場合は他の親族受益権の割合には贈与税が課税されることになります。

また、信託財産が不動産である場合には、信託の設定に伴い、信託の登記をするにあたって、登録免許税が課せられます。

なお、信託の設定の不動産取得に伴う不動産取得税は非課税となります。

それから、信託契約書については、1通200円の印紙税が課せられます。

次に、信託期間中の課税については、新たに受益者が存するに至った場合は、贈与税または相続税が課税されます。例えば、遺言代用信託の場合には、新たに受益権を取得した受益者に対して相続税が課税されることになります(相続財産の総額が基礎控除額を下回っている場合には、相続税は課税されません)。

それから、信託が終了した場合については、信託財産を取得した残余財産受益者または帰属権利者には、贈与税または相続税が課せられます。例えば、受益者の死亡により信託が終了した場合には、信託財産を取得した残余財産受益者または帰属権利者には相続税が課せられます(相続財産の総額が基礎控除額を下回っている場合には、相続税は課税されません)。

信託財産が不動産である場合には、信託の終了に伴う信託終了の登記と所有権移転登記をするにあたって登録免許税が課せられます。また、原則として、不動産取得税が課税されます(ただし、例外があります)。

このように、家族信託の設定から終了までには、さまざまな課税が生じます。信託契約をする際には、専門家に相談してこれらの課税制度についても考えていく必要があります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)