被相続人が外国人である場合の相続登記

日本に不動産を有する外国人の死亡による相続登記の場合であっても、その申請手続については、日本人が被相続人となる場合と基本的には異なるところはありません。日本にある不動産の手続であるから、当然に日本の不動産登記法に基づいて行われるからです。したがって、通常の場合と同様に、申請書と添付書面を提供しなければなりません。しかし、被相続人が外国人であることから、通常の相続登記の場合と異なる点があります。

被相続人が外国人である場合にも、その相続を証する書面の提供を要します。ところが、日本のような戸籍制度を有するのは台湾に限られ、韓国においても2008年に戸籍制度が廃止されています。そこで、登記実務では、日本のような戸籍制度を有しない外国人の死亡による相続登記については、原則として、申請人が登記名義人の相続人であり、かつ、申請人以外に相続人が存在しないことを証する日本の官公署(役所のことです)または大使館や領事館などの証明書の提供を要するものとされています。例えば、日本に不動産を有する在日韓国人が死亡した場合における相続登記の申請には、韓国の家族関係登録簿の登録事項別証明書(家族関係証明書など)、除籍された従前の戸籍の謄本、在日大使館または領事館で発行されたこれらの証明書を提供することになります。外国文字で作成された書面については、翻訳文を添付しなければなりません。

これらの証明書が、被相続人の死亡からのものを取得できない場合には、外国人登録原票の提供を求められることがあります。外国人登録原票とは、特定の外国人を識別することができる個人情報として、出入国在留管理庁において管理されているものをいいます(この制度は、平成24年に廃止されていますが、廃止前の登録原票を取得することはできます。)。登録原票の取得には、3,4週間ほどかかります。

このように、被相続人が外国人である相続登記の申請には、被相続人が日本人である場合とは、提供する書類が異なり、また、それは被相続人の国籍ごとに異なっていて、分かりにくいものとなっています。そこで、日本に不動産を有する外国人が亡くなったときには、弁護士や司法書士などの専門家に相談されるとよいでしょう。

(司法書士・行政書士 三田佳央)