死後事務委任契約において定める事項2

自分の死後の事務について、生前に信頼できる第三者に委任しておくことにより、円滑な死後事務の処理を図ることができたり、自分の遺志を反映した死後事務の処理をしたりすることが可能となります。特に、頼れる家族がいない、たとえいたとしても諸事情によりその家族を頼ることができないなどの事情がある場合には、死後事務委任契約を締結しておく必要性が高いといえるでしょう。第三者に自分の死後事務の処理を委任するには、事前に死後事務委任契約を締結しておく必要があります。

死後事務委任契約を締結する際には、遺言などと抵触しない限り、死後のさまざまな事務の処理について定めることができます。その中で行政機関への届出等の手続について定めることが考えられます。では、死亡届の提出について委任する旨を定めることはできるでしょうか。

人が死亡した場合には、届出義務者が死亡の事実を知ってから7日以内に、死亡地の役場において、死亡診断書や死体検案書を添付して、死亡届をしなければなりません。

届出義務者としては、戸籍法に、①同居の親族、②その他の同居者、③家主、地主、家屋や土地の管理人が定められています。また、届け出をすることができる者として、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者が定められています。この定めは、限定列挙と解されているため、ここに定められていない者が死亡届の事務処理を委任されたとしても、届出人となることができません。

そこで、上述した死亡届の届出をすることができる者として定められていない者に対して、死亡届の事務処理を委任するには、その者と死後事務委任契約の締結と合わせて、任意後見契約を締結しておくという方法が考えられます。任意後見契約を締結することにより、その第三者は任意後見受任者となり、その後、家庭裁判所により任意後見監督人が選任されると任意後見人となり、死亡届の届出をすることができる者に該当することになるからです。

その第三者と任意後見契約を締結しない場合には、届出をすることができる者に該当しないため、届出をすることができる本人の親族や家主などに死亡の事実を伝えて、死亡届の提出を促すといった対応をすることになるでしょう。 このように、死後事務委任契約によって第三者に死亡届の事務処理について委任するには、その第三者が死亡届の届出をすることができる者に該当するか否かを確認する必要があります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)