死後事務委任契約において定める事項1

任意後見契約や財産管理等委任契約を締結しており、第三者に対してその事務に係る代理権を付与していたとしても、本人が死亡するとこれらの契約は終了し、死後の事務処理が残されることになります。これらの契約の受任者がこの死後の事務を処理することは、善処義務や事務管理に該当する場合を除き、することができません。そのため、これらの受任者が死後の事務を処理するには、死後事務委任契約を締結する必要があります。

死後事務委任契約では、死後の事務処理について広く定めることができます。ただし、死後の事務について定めることの性質上、遺言との抵触が生じないように注意する必要があります。死後事務委任契約において定めることができる死後事務には、大きく分けて、葬送に関する事務、行政機関への届出等の手続、生活に関する手続があります。

葬送に関する事務は、死後事務として本人が亡くなってすぐに生じるものです。葬送に関する事務としては、①ご遺体の引取り、②葬儀・火葬に関する手続、③埋葬・散骨等に関する手続、④供養に関する手続などがあります。

私たちが生活する中で受けているさまざまな行政サービスは死亡とともに終了します。そのため、本人が死亡したら行政機関への届出等が必要となります。主なものとしては、①死亡届の提出、②健康保険証の返還、③運転免許証やパスポートの返納、④年金の受給資格抹消申請、⑤住民税・固定資産税等の税金の納付などです。

生活に関する手続としては、生前利用していたサービスを終了させるための手続や未払料金の精算があります。主なものとしては、①関係者への死亡の連絡、②病院や介護施設の未払料金の精算、③賃貸不動産の契約解除・明渡し、④公共料金の精算・解約手続、⑤携帯電話やインターネットの解約手続などです。また、近年はSNSのアカウント削除など、個人情報の抹消について委任することが求められています。

(司法書士・行政書士 三田佳央)