遺産分割の対象となる財産とは2

損害賠償請求権のような可分債権については、法律上当然に分割され、各共同相続人がその法定相続分に応じてその権利を承継することになるため、遺産分割の対象とはならないとするのが最高裁判所の判例です。これは、可分債権は法律上当然に分割されるとする民法427条の規定に基づき、可分債権につき各共同相続人はその法定相続分に応じて承継するものだからです。

預貯金債権については、これも可分債権であるが、遺産分割の対象となるとするのが最高裁判所の判例です。これは、預貯金債権は、口座により管理されており、預金契約上の地位を準共有する共同相続人が全員で預貯金契約を解約しない限り、1個の債権として同一性を保ちながら、入出金によりその残高が変動し得るものであることから、預金者が死亡したことにより法律上当然に分割されるとすると、各共同相続人が承継する金額は観念的なものにすぎないので、その額を確定することができないからです。

しかし、民法の規定により、各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の3分の1に法定相続分を乗じた額については、単独でその権利を行使することができます。これは、預貯金債権について、遺産分割が終わるまでその権利を行使できないとすると、生活費の確保や葬儀費用その他の支払いに対応できず困ることになる場合があるからです。この場合における、行使することができる権利の額は、150万円が限度とされています。

なお、この場合において、その権利を行使した預貯金債権については、その共同相続人が遺産分割により取得したものとみなされます。

(司法書士・行政書士 三田佳央)