遺産分割の対象となる財産とは1

遺産分割の対象となる財産は、相続財産です。特定の不動産の引渡請求権や引渡義務、登記移転請求権や引渡義務、投資信託の受益権、個人向け国債などの不可分債権や債務は、不可分なものとして共同相続人全員に帰属し、遺産分割によりその取得者を確定します。

遺産分割の前に、一部の相続人が他の相続人の知らない間に無断で遺産に属する財産を処分した場合は、実務では、無断処分された財産は、遺産分割の対象とはならないものとして扱われています。遺産分割は、遺産分割時に存在する財産を相続人間で分配する手続だからです。この場合、他の相続人は処分した相続人に対して、処分した財産の額を不当利得や不法行為を理由に請求することができます。しかし、訴訟をする負担や処分した相続人の法定相続分相当額を除いた残額の請求にとどまることなどから、結果として、無断処分をした相続人が不当に利得することになってしまいます。

そこで、民法は、遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、処分した相続人を除く全員の同意により、その処分された財産を遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができることとして、相続人間の公平を図っています。これにより、遺産に属する財産を処分した相続人について、その財産の額をその相続人の具体的相続分に充当し、超過分があれば、他の相続人に対して代償金を支払わせることができ、前述のような訴訟のリスクを回避することができます。

(司法書士・行政書士 三田佳央)