個人再生手続の終結とその後

個人再生手続は、再生計画認可決定の確定により終結します。認可決定の確定時期は、即時抗告が提起されなかったときは、1週間または2週間の即時抗告期間の満了とともに確定し、即時抗告が提起されたときは、その却下または棄却の決定が確定したときに確定します。

個人再生委員が選任されている場合であっても、その者による計画遂行の監督は想定されていません。手続の簡易化と廉価なものにするためです。また、再生債権者表に執行力は認められないことから、再生計画遂行の確保は、再生計画の変更や取消しによってなされることになります。

個人再生手続では、再生計画認可後のやむを得ない事由で計画遂行が著しく困難となったときは、再生計画で定められた債務の期限を延長することが可能です。ただ、弁済総額を変更することはできず、債務の期限の延長は最大で2年の範囲に限定されています。手続終了後も計画変更を認めたのは、個人再生手続では、認可決定の確定と同時に手続が終了してしまうことと、個人の場合は病気やリストラなどのような事情の変更が生じる余地が大きく、計画変更を認めないと債務者に酷なこととなることを考慮したためです。

再生計画の遂行を困難とする状況が生じ、計画変更による対応も不可能なときには、原則として、再生計画が取り消されることになります。また、認可決定の確定後に、再生計画による弁済総額が破産手続における債権者への配当の総額を下回ることが明らかになったときにも、裁判所は、債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができます。個人再生手続では、債務者の財産状況の調査が不十分なことが多いことから、破産手続による配当額を下回るような場合に再生計画の取消しとすることによって、債務者の自主的で正確な財産開示を間接的に確保するためです。

なお、債務者による再生計画の遂行が極めて困難となり、一定の要件を満たす場合には、裁判所は、債務者の申立てにより、免責の決定をすることができます。その要件とは、①債務者に責めに帰することのできない事由によるものであること、②各債権についてすでに4分の3以上の額の弁済を終えていること、③免責決定が債権者一般の利益に反しないこと、④再生計画の変更が極めて困難であることです。免責の申立てがあったときは、裁判所は債権者の意見を聴取します。免責決定が確定した場合、その対象となる債権は、弁済済みの債権や権利変更が許されない債権を除くすべての債権です。

(司法書士・行政書士 三田佳央)