株式会社と合同会社との違い

会社には、株式会社、合名会社。合資会社、合同会社があり、わが国に存在する会社の大半は株式会社です。ただ、最近では合同会社が設立されることも増えています。そのことと関連して、実務では、株式会社と合同会社の違いについて質問されることが増えてきています。そこで、株式会社と合同会社の違いについて説明します。

株式会社と合同会社とで異なる点としては、①設立手続きにおける定款認証の要否、②構成員と経営者との分離、③役員の機関や任期の有無、④決算公告の義務の有無、⑤構成員の地位の譲渡に関する自由度などがあります。

①株式会社を設立する際に作成した定款は、公証人による認証を受けなければその効力を生じません。これに対し、合同会社を設立する際に作成した定款は、公証人による認証を受ける必要がありません。その分、株式会社を設立するより合同会社を設立する方が、費用が安く短い時間で設立手続きができます。なお、定款記載事項に違いがあります。

②株式会社では、その構成員である株主が業務執行に携わるのではなく、株主総会において取締役を選任して、その取締役が業務執行に携わることになります。これに対し、合同会社では、構成員である社員自身が業務執行に携わることになります。ただ、小規模な株式会社でも、株主が取締役となって業務執行に携わっています。

③株式会社においては、取締役会や監査役などの機関を設置しなければならない場合がありますが、合同会社においては、そのようなことはなく、定款で自由に定めることができます。また、株式会社における取締役の任期は原則2年ですが、合同会社における業務執行社員には任期がありません。

④株式会社においては、決算後に貸借対照表等の計算書類を作成して、それを定時株主総会に提出した後に公告しなければなりません。公告方法は定款で定めることになっており、そしてそれが登記事項となっており、登記されている公告方法により公告することになりますが、官報で公告することが多いと思われます。これに対し、合同会社においては、株式会社のような決算公告の義務はありません。

⑤株式会社においては、その構成員である株主としての地位を自由に譲渡することができます。これに対し、合同会社においては、その構成員である社員としての地位を譲渡するには、他の社員全員の承諾がなければならないのが原則です。 株式会社は、その事業や会社の規模が大きなものとなることに対応することができるような仕組みになっています。これに対し、合同会社は、同族会社など小規模な会社が運営することを前提としている仕組みとなっています。

会社の設立を検討するにあたって、将来的に事業の規模を大きくするといったことを想定されているのであれば株式会社を設立し、そこまで想定はしていなくて一人または少人数で事業をしていくのであれば合同会社を設立するのが良いと思われます。ただ、合同会社を株式会社に変更することも可能なので、まずは、設立の費用や手間が株式会社より少ない合同会社を設立して、事業が軌道に乗って規模を拡大するタイミングで株式会社に変更するのも一つの選択肢となり得るでしょう。

(司法書士・行政書士 三田佳央)