取締役の任期とその変更

株式会社においては、株主総会で必ず取締役を選任することになります。取締役は、株式会社の役員であって、どんな規模の株式会社であっても一人以上の取締役の設置が義務とされています。

取締役には任期があります。その任期は、原則として2年です。厳密には、選任後2年以内に終了する事業年度のものに関する定時株主総会の終結の時までです。例えば、事業年度が4月1日から翌年3月31日までの株式会社において、令和4年8月17日に取締役Aを選任したとすると、この取締役Aの任期は、令和6年3月31日までの事業年度に関する定時株主総会の終結の時になります。定時株主総会は、通常、事業年度が終了してから3か月以内に開催されます。このように、取締役の任期は、選任時期と事業年度との関係で決まることになります。

なお、この任期は、定款または株主総会の決議によって短縮することができますが、伸長することはできません。ただし、その株式会社が定款に全部の株式の譲渡による取得について当該会社の承諾要する旨の定めがあるのであれば、その任期を10年まで伸長することができます。実務では、この規定によって、取締役の任期を2年より長く定めている株式会社が多数あります。

定款を変更して任期を伸長した場合には、在任中の取締役の任期も特段の事情がない限り、伸長されます。したがって、任期満了を迎えるはずの定時株主総会において、任期を伸長する定款の変更を行った場合には、定時株主総会の終結前に定款変更の効力が生じるため、在任中の取締役は、伸長後の任期満了まで退任しないことになります。なお、任期満了後に任期を伸長する定款を変更をしても、その効力は任期満了した取締役には及びません。この取締役は、すでに退任しているからです。

定款を変更して取締役の任期を短縮した場合には、在任中の取締役の任期を短縮されます。その結果、定款を変更した時点で任期が満了した取締役は、その時点で任期満了により退任します。

定款を変更して事業年度を変更して決算期が繰り上げられた場合には、在任中の取締役の任期も短縮されます。このように、取締役の任期を直接変更しなくても、定款を変更することにより、取締役の任期に影響を及ぼす事項があります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)