成年後見制度開始の申立ての対象者

成年後見制度には、補助、保佐、後見の3つの類型があります。成年後見制度開始の申立てをする際には、本人の判断能力の程度にふさわしい類型について開始の申立てをする必要があります。

補助開始の申立てについては、精神上の障害により判断能力が不十分な者が対象となります。民法13条1項に列挙されている重要な法律行為を単独で行うことも不可能ではないが、その一部について判断能力が不十分であるため不安があり、支援を受けた方が適当であると考えられる者のことです。保佐・後見類型に該当する者は除外されます。民法13条1項に列挙される行為の全部について支援を受けた方が適当と考えられる者は、保佐類型を利用すべきであり、すべての法律行為について支援を受けた方が適当であると考えられる者は、後見類型を利用すべきだからです。

保佐開始の申立てについては、精神上の障害により判断能力が著しく不十分な者が対象となります。日常生活に必要な買い物など簡単な取引はできるが、民法13条1項に列挙されている重要な法律行為を単独で行うことができない者のことです。後見類型に該当する者は除外されます。

後見開始の申立てについては、精神上の障害により判断能力を欠く常況にある者が対象となります。日常生活に必要な買い物など簡単な取引も単独で行うことができない者のことです。後見類型においては、本人がした法律行為は、成年後見人が取り消すことができるが、日常生活に関する行為については取り消すことができないとされます。しかし、これは、日常生活に関する行為について判断能力を有するという趣旨ではなく、自己決定の尊重の観点から、日常生活に関する行為については、本人の判断に委ねて取消権の対象から除外されたのです。「常況」とは、通常は判断能力を欠く状況にあるという趣旨であり、判断能力を欠く以上、通常は意思能力を欠く状態にあるということになります。

成年後見制度開始の申立てをするときに、どの類型で申立てをするかは、医師が作成した「診断書(成年後見制度用)」の記載内容に基づいて判断能力を判断することになります。ただ、診断書の記載内容と異なる類型についての開始の申立てをすることもできます(例えば、診断書の記載内容は保佐相当であるが、補助開始の申立てをする場合です。)。本人がどの類型の対象者であるかは、診断書以外の資料をも参考にして判断されるからです。その際には、上申書を提出する必要があります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)