成年後見制度開始の申立てができる者1

成年後見制度を開始するには、家庭裁判所に補助・保佐・後見開始の申立てをする必要があります。これらの申立てができる者は法律により定められています。

補助開始の申立てができる者は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(成年後見人及び未成年後見人をいいます。)、後見監督人(成年後見監督人及び未成年後見監督人をいいます。)、保佐人、保佐監督人、検察官、市町村長、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人です。

補助類型では、本人は意思能力を有する者であることから、申立権が認められています。

後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人に申立権が認められているのは、本人が保佐類型や後見類型を開始する審判を受けているが、補助類型が相当となった場合に、補助類型に移行することができるようにするためです。

検察官は、公益の代表者として申立権が認められています。

市町村長は、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは、成年後見開始の審判を請求することができます。これは、成年後見制度による支援を必要としている者が放置されることなく、成年後見制度による支援を受けられるようにする趣旨です。「その福祉を図るため特に必要があると認めるとき」とは、本人に配偶者や四親等内の親族がいなかったり、このような者がいたとしても音信不通の状況にあったりして、申立てを期待することができないが、本人の保護のために申立てをする必要がある場合をいいます。このような場合には、民生委員や福祉関係者からの情報に基づいて、市町村長による申立てを行うことになることが想定されます。なお、実務では、市町村長による申立てのことを「市長申立て」と呼ぶことがあります。市町村長には、特別区の区長も含まれます。

任意後見契約を締結した本人について、成年後見制度を利用させることが本人の利益ために特に必要と認められる場合において、成年後見制度への円滑な移行を可能とするため、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人に申立権が認められています。

なお、本人以外の者の申立てにより補助開始の審判をする場合には、本人の同意が必要です。補助類型では、本人の判断能力の低下の程度が軽いため、本人による自己決定を尊重する趣旨です。本人の同意は、補助開始の審判をするための要件であるため、当該審判をする段階で本人の同意がなければなりません。

(司法書士・行政書士 三田佳央)