相続と登記に関する法改正について2(相続放棄)

Aが死亡して、相続人として配偶者Bと子CとDがいるが、Cが家庭裁判所にて相続放棄の手続きをしました。ところが、相続財産中の甲土地について、BDの相続登記がされる前に、Dの債権者Eが、Dに代位して共同相続分の相続登記をし、ついで、Dの持分につき、仮差押えの登記をしました。この場合、BDは、仮差押えを排除して、仮差押えの抹消登記を請求することができるでしょうか。

相続開始を知った時から3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄をする旨の申述をすると、初めから相続人とならなかったものとみなされます。相続放棄の効力については、遺産分割のときと異なり、第三者を保護する規定が設けられていません。最高裁の判例も、相続放棄の「効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずる」としています。

このことは、平成30年改正の民法899条の2が規定されても変わらないとされています。民法が相続人にその相続を放棄することを認めているのは、「相続人に無条件に権利義務を承継することを強制しないこととして、相続人の利益を保護しようとしたもの」だからです。 その結果、上記設例のBDは、Eに対して、仮差押えの抹消登記を請求することができることになります。Cは相続放棄をしたことにより甲土地について無権利者であり、EはCに対する債権のために、BDの所有する甲土地に対して仮差押えをしたことになるからです。

(司法書士・行政書士 三田佳央)