相続と登記に関する法改正について3(遺言1)

Aが死亡し、相続人として配偶者Bと子CとDがいて、Aは死亡当時、甲土地を所有していました。Aは、甲土地をEに遺贈する遺言を残していました。ところが、Eへの所有権移転登記がされる前に、Cが法定相続分に基づく相続登記を申請し、それに基づいてBCDの共有名義の所有権移転登記がされました。ついで、BCDが甲土地をFに売却して、それに基づくFへの所有権移転登記がされました。EはFに対して、真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続きを請求することができるでしょうか。

遺言の効力は、遺言者の死亡の時から生ずることになります。そうすると、Aが死亡した時点でBCDは甲土地について無権利者となり、Fへの売却は無効となるのではないかと考えられそうです。

この点について、最高裁の判例は、遺贈による不動産の権利変動の場合には、民法177条が適用され、遺贈によって所有権を取得した者は、その登記をしなければ、その事実を第三者に主張することができないとしています。遺贈は遺言者の意思表示によって物権変動が生ずるものだからです。

その結果、Eは、遺贈に基づく所有権移転登記をしていないため、Fに対して、真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続きを請求することができないことになります。 なお、この結論は、平成30年の民法改正によっても、変わるところはありません。遺贈による権利の取得は、「相続による権利の承継」ではないからです。

(司法書士・行政書士 三田佳央)