相続と登記に関する法改正について1(遺産分割)

被相続人A相続人として配偶者Bと子C・Dがいます。BCD間で遺産分割協議をした結果、相続財産中の甲土地をBが単独所有することとしました。ところが、Cが、甲土地について法定相続分どおりの相続登記をして(B持分2分の1、C持分4分の1、D持分4分の1)、自己の持分を目的とする抵当権をEの債権を担保するために設定し、その登記をしてしまいました。Bは、Eに対して、甲土地は自己の単独所有であることを主張して、抵当権の抹消登記をするように請求できるでしょうか。

民法909条によると、遺産分割協議をすると、その効力は相続開始時に遡って生じますが、第三者の利益を害することはできません。ここでいう「第三者」とは、遺産分割協議がされる前に現れた第三者を指します。例えば、上記設例でいえば、遺産分割協議がされる前に、Eが、Bの持分に抵当権を設定した場合です。この規定は、相続人と利害関係を有するに至った第三者を保護する趣旨だからです。したがって、この場合のBは、Eに対して、抵当権の抹消登記を請求することができないことになります。

上記設例のEのように、遺産分割協議がされた後に、相続人と利害関係を有するに至った者と、遺産分割協議によって、法定相続分を超える権利を相続したBとの関係では、民法909条は適用されませんが、不動産に関する権利の変動を第三者に主張するには、登記をしなければならないとする民法177条が適用されます。その結果、Bは、遺産分割に基づく相続登記をしなければ、Eに法定相続分を超える権利を相続した事実を主張することができませんので、Eに対して、Bの持分に設定した抵当権の抹消登記を請求することができないことになります。これが、法改正前の最高裁の判例の立場です。

この点について、平成30年に民法が改正されました。すなわち、相続により承継した権利が、法定相続分を超える部分については、不動産であれば登記をしなければ、第三者に主張することができないとされました。その結果、上記設例のBは、相続登記をしなければ、Eに対して、単独所有であることを主張できず、抵当権の抹消登記を請求することができないことになります。法改正によって従来の扱いに変更は生じませんが、法改正によって明文の根拠が与えられたといえます。

いずれにせよ、遺産分割協議によって不動産の権利を相続した者は、速やかに相続登記をして、自己の権利を守りましょう。

(司法書士・行政書士 三田佳央)