成年後見制度の課題3

本人が入院している場合に、病院側から成年後見人に対して、手術等医療行為の同意を求めることがあります。しかし、現在、成年後見人には、本人に対する医療行為について同意する権限が認められていません。本来、医療行為を受けるかどうかを決めることができるのは、医療行為を受ける本人だけです。第三者が同意して本人に医療行為を受けさせることは、本人の人格権や自己決定権を侵害するため違法です。なお、本人が同意できないときは、通常は家族が同意していますが、この家族の同意には法的根拠はありません。

成年後見人には医療行為の同意権はありませんが、だからといって、同意しないでいると、本人に対して医療行為がなされないので、本人が治療を受けることができないという不都合が生じてしまいます。そこで、実務では、成年後見人がやむを得ず同意することがありますが、その法的根拠については様々な考えがあります。

緊急性がある場合には、緊急事務管理や緊急避難などにより違法な行為ではないと評価することができます。緊急性がない場合には、成年後見人には身上監護に関する事務を行う義務があることから、医療行為に対して同意することができるという考え方がありますが、上記の義務から同意権を導くことができるといえるかは明確ではありません。 このように、成年後見人について、医療行為に対して同意することができるかが法律上不明確であるため、実際に病院側から同意を求められたときに、同意をすることに対して躊躇してしまうことがあります。しかし、これでは、医療行為をうける必要のある本人にとって不利益な事態を生じさせてしまいます。このような状況を解消するためには、成年後見人の医療行為の同意権について、立法により解決することが不可欠であるといえるでしょう。