任意後見制度の必要性4

任意後見制度の特徴としては、任意後見人となるべき受任者や委託する事務の内容・付与する代理権の範囲について、本人の意思によって決定することができ、自己決定の尊重の理念に即して本人の意思が反映される仕組みとなっている点にあります。これに対し、法定後見制度における補助類型は、補助人の選任について本人の意思を考慮すべきとされていますが、最終的には家庭裁判所の職権で選任されることになるので、自己決定の尊重にはおのずから限界があります。同様に、代理権の付与についても、本人による申立てまたは本人の同意を要するとされていますが、最終的には家庭裁判所によって付与される代理権の範囲が決定されます。

次に、任意後見契約においては、任意後見人に対して、代理権を付与することはできますが、同意権・取消権を付与することはできないとされています。このことから、任意後見制度は、本人の行為能力を制限するものではないということになります。これに対し、補助類型においては、本人による申立てまたは本人の同意があれば、補助人に対して本人が特定の法律行為をすることについて同意権・取消権を付与することができます。この場合には、本人の行為能力は制限されていることになります。

また、任意後見制度においては、任意後見契約を発効させるには、本人の判断能力が低下したときに、家庭裁判所が任意後見監督人を選任する必要があります。つまり、必ず任意後見監督人が選任され、家庭裁判所による任意後見人の事務の監督は、任意後見監督人を通じて間接的に行われます。これに対し、補助類型においては、補助監督人の選任は任意的であり、たとえ補助監督人が選任されたとしても、家庭裁判所による補助人の事務の監督は、補助監督人を介することなく直接的に行われることもあります。

そのほか、任意後見制度を利用する場合には、受任者と公正証書による契約を締結することになりますが、補助類型を利用する場合には、申立権を有する者により、家庭裁判所に対して、補助開始の審判の申立てをする必要があります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)