預貯金口座を信託財産とする家族信託3

信託専用口座は、信託口口座とは異なる口座です。信託専用口座は、受託者名義の口座を開設し、その口座の情報を信託契約書に記載したものです。現在では、信託口口座の開設が極めて困難な状況にあるので、実務では、信託専用口座を開設することで対応していることが多いようです。

信託専用口座は、受託者名義で口座を開設するので、簡単に新規の口座を開設することができます。その際に費用はかかりません。口座を開設したら、信託契約書に、その口座の金融機関名・口座番号・名義人などの情報を記載します。これによって、受託者の固有財産ではなく信託財産で判明できるので、受託者として分別管理していることが分かります。

また、信託口口座とは異なり、キャッシュカードやインターネットバンキングなどを利用することができます。

ただし、信託口口座とは異なり、受託者が委託者より先に死亡した場合には、信託専用口座が凍結される可能性があります。信託専用口座は、受託者名義の口座であるので、金融機関からすれば信託財産であることが分からないからです。凍結されると、通常の相続手続により口座の解約をすることになります。そのため、いったん法定相続人が相続手続により信託専用口座の現金の払い戻しをして、受託者の死亡後に信託財産を管理する後継受託者にその現金を引き継ぐ必要があります。法定相続人の中に協力を得られない者がいる場合には、その現金を信託財産として管理できなくなるおそれがあります。

また、受託者の債務の支払いができない場合には、信託専用口座が差押えをされる可能性があります。信託専用口座は受託者名義の口座だからです。もし信託専用口座が差押えをされたら、裁判で信託財産である旨を主張して差押えの解除をしなければなりません。その裁判は手続に時間がかかり、その手続の間は信託専用口座から現金を引き出すことができません。

このように、信託専用口座は、利便性がありますが、デメリットもあります。信託専用口座を開設して信託財産として管理される場合には、そのデメリットを十分に理解したうえで管理するようにすべきでしょう。

(司法書士・行政書士 三田佳央)