協議離婚の際に定める財産分与2

協議離婚をする際に、被用者保険(厚生年金や共済年金のことです。)について、夫婦の合意により、将来において受け取ることができる年金を分割することができます。分割することができるのは、報酬比例部分(納めた保険料に基づいて支給される部分のことです。)についてです。分割の上限は2分の1です。すなわち、年金を分割する旨とその割合について合意する必要があります。この合意に基づく分割をするには、離婚後に、年金事務所にて手続をする必要があります。

また、国民年金の3号被保険者(被扶養配偶者のことです。被保険者の配偶者で年収130万円以下の者で、保険料の負担なしで基礎年金の受給権があります。)の期間については、配偶者の年金の報酬比例部分の2分の1において分割が認められます。この分割を実現するには、離婚後に、年金事務所にて手続をする必要があります。この分割については、合意は不要です。

これらは、婚姻時における夫婦の老後の生活保障を、離婚によって失われないようにする制度です。また、年金の保険料は、夫婦が共同で負担したものであるという認識によるものです。なお、これらの制度は、各年金に関する法律によって設けられた制度であり、財産分与そのものではありませんが、実務では、協議離婚をする際に、他の事項と合わせて合意をしています。

協議離婚をするに際して、相手方に対して、慰謝料を請求することがあります。これは、離婚されたこと自体を原因として生じる精神的苦痛による損害賠償のことです。例えば、相手方の不貞行為、暴力や虐待、悪意の遺棄、婚姻関係の形成や維持に協力しない行為、正当な理由のない性交渉の拒否などにより離婚した場合などです。

実務では、慰謝料の相場のようなものがあり、物価の上昇にもかかわらず、平均で200万円前後、最高額は500万円で頭打ちという状況にあり、財産分与で増額を図り、慰謝料については、あまり積極的ではない傾向がみられるようです。財産分与をしてもなお、精神的苦痛を慰謝するには足りないと認められるときに、別個に慰謝料を請求することができると考えられているようです。

(司法書士・行政書士 三田佳央)