相続した土地の国庫帰属の要件3

相続土地の国庫帰属の申請が承認されるためには、その土地が国庫帰属を承認しない事由に該当しない土地でなければなりません。この事由に該当しない土地であれば、たとえ国として利用する予定がまったくなかったとしても、国庫帰属を承認しなければなりません。国庫帰属を承認しない事由に該当する土地とは、①崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用または労力を要する土地、②土地の通常の管理または処分を阻害する工作物・車両・樹木その他の有体物が地上に存する土地、③除去しなければ土地の通常の管理または処分をすることができない有体物が地下に存する土地、④隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理または処分をすることができない土地、⑤このほか、通常の管理または処分をするに当たり過分の費用または労力を要する土地のことです。

①崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用または労力を要する土地について、国庫帰属を承認が認められないのは、崖がある土地は、安全対策等の管理コストがかさむおそれが高く、国庫に帰属させることは財政負担の観点から相当でないからです。そうすると、例えば、周囲に人家が存在せず、天災等により崖崩れが発生したとしても周囲の土地の損害発生の可能性が低いような土地については、管理コストが必ずしもかさむわけではありません。そこで、ここにいう崖は、勾配・高さその他の事情について政令で定める基準に該当するものに限られています。

②土地の通常の管理または処分を阻害する工作物・車両・樹木その他の有体物が地上に存する土地について、国庫帰属を承認が認められないのは、管理または処分のために費用や労力を要するからです。ただ、例えば、森林において樹木があるのは通常ですし、安全性に問題のない土留めや柵等がある場合など、その土地の性質や形状によっては、地上に工作物が存したとしても、必ずしも通常の管理または処分を阻害するわけではありません。そこで、地上にあるその有体物が土地の通常の管理または処分を阻害する場合に限り、国庫帰属の承認が認められないのです。

③除去しなければ土地の通常の管理または処分をすることができない有体物が地下に存する土地について、国庫帰属を承認が認められないのは、その撤去のために多大な費用がかかるうえに、周囲に害悪を発生させるおそれがあるからです。ただ、例えば、広大な土地の片隅に存する配管のように、土地の性質や形状照らしてその土地の通常の管理または処分をするに当たって支障のない有体物であれば、除去しなくても特に問題ないことになります。そこで、地下にあるその有体物を除去しなければ通常の管理または処分をすることができない土地に限り、国庫帰属の承認が認められないのです。

④隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理または処分をすることができない土地について、国庫帰属を承認が認められないのは、その管理を行ううえで障害が生ずるおそれが高いからです。例えば、不法占拠者がいる土地などです。この土地の具体的内容は政令で定められることになっています。

⑤上記以外の通常の管理または処分をするに当たり過分の費用または労力を要する土地とは、例えば、共益費等の支払いを要する土地、森林の伐採後に植栽等の造林が行われていない土地などです。この土地の具体的内容は政令で定められることになっています。

このように、土地の種別・現況・隣地の状況などを踏まえて、実質的に見て通常の管理に当たり過分の費用または労力を要する土地に該当するものについては、国庫帰属を承認しない旨の処分がなされることになります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)