相続登記の流れ1

不動産の登記名義人が死亡すると、相続が開始します。相続人は、相続が開始した時から、その不動産の所有権を相続により取得します。相続人が数人ある場合(共同相続の場合です。)には、その不動産は共同相続人の共有となります。その持分は、遺言により相続分の指定されている場合には、その相続分、それがない場合には、法定相続分となります。

共同相続人の中で特定の相続人にその不動産を取得させる場合や、法定相続分とは異なる持分で取得する場合には、共同相続人で遺産分割協議をする必要があります。そして、その事実を第三者に主張するためには、相続登記をしなければなりません。なお、相続財産である不動産を売却するには、まず、相続登記をして相続人を名義人としなければ、売却により買主を名義人とする所有権移転登記をすることができません。

相続登記の申請に必要な書類は、①被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・改製原戸籍・除籍謄本(必ず謄本でなければなりません。)、②相続人の現在戸籍(抄本でも問題ありません。)、③相続人全員の印鑑証明書、④遺産分割協議書、⑤不動産を取得する相続人の住民票(本籍の記載のあるものに限ります。)、⑥相続財産である不動産に関する固定資産評価証明書または固定資産評価通知書です。

①の戸籍謄本等は、被相続人の法定相続人が誰であるかを把握し、証明するために必要となります。そのため、必ず謄本でなければなりません。抄本だと特定の者しか記載されていない戸籍であるため、法定相続人全員を把握することができないからです。

②の相続人の現在戸籍は、特定の法定相続人が存命していることを証明するために必要となります。そのため、謄本である必要はなく、特定の相続人のみが記載された抄本で足ります。謄本であっても問題はありません。配偶者の現在戸籍は、①の被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本に記載されている場合には、重ねて配偶者の現在戸籍を取得する必要はありません。

③の相続人全員の印鑑証明書は、④の遺産分割協議書に相続人が実印を押印することとなっており、その押印された印影が実印のものであるかを確認するために必要とされています。この印鑑証明書には有効期限が定められていません。

④の遺産分割協議書は、同じ遺産分割協議書に共同相続人全員が署名押印する場合が多いですが、共同相続人ごとに遺産分割協議書を作成して、それぞれが別々の遺産分割協議書に署名押印することもできます。これは、各共同相続人が遠方に住んでいるなどに、遺産分割協議書を同時に郵送することができ、時間短縮に繋がる方法です。共同相続人が別々に署名押印した遺産分割協議書を合わせて一つの遺産分割協議書として扱われます。

⑤の不動産を取得する相続人の住民票は、その相続人の住所を証明するために必要となります。本籍の記載のあるものでなければならないのは、戸籍に記載されている相続人と、住民票に記載されている者の同一性を確認するためです。戸籍に記載されている本籍と、住民票に記載されている本籍が同じであれば、その住民票は、その相続人の住所を証明していることが確認できます。

⑥の固定資産評価証明書または固定資産評価通知書は、相続財産である不動産の評価額を証明するために必要となります。相続登記を申請する際には、登録免許税を納めなければなりませんが、その額は、固定資産評価額に1000分の4を乗じた額であるため、固定資産評価額を証明する必要があります。固定資産評価証明書は、相続登記以外の手続でも使用することができ、1通300円で取得できます。固定資産評価通知書は、登記手続にしか使用できませんが、無料で取得できます。市町村役場の固定資産税の窓口で取得できますが、固定資産評価通知書を扱っていない市町村もあります。なお、固定資産評価証明書または固定資産評価通知書に代えて、固定資産課税明細書(毎年4月頃に固定資産税の納税義務者に送付されるものです。)を提供することで足りる場合があります(法務局により異なります。)。

(司法書士・行政書士 三田佳央)