相続放棄の手続について

被相続人が死亡し、相続が開始したので遺品を整理していたところ、遺産について不動産や預貯金などの積極的な財産よりも、債務などの消極的な債務の方が多いことが判明するということが少なくありません。このような場合、相続を承認をすると、債務超過の遺産を相続することになり、自己の財産をもって債務の支払いをしなければならなくなってしまいます。このような事態を避けるためには、相続放棄をすることになります。相続放棄をすると、初めから相続人とはならなかったものとみなされるため、遺産について積極的な財産も消極的な財産も相続しないからです。

相続放棄をするためには、家庭裁判所において、熟慮期間内に相続放棄をする旨の申述をしなければなりません。この申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出することにより行います。この申述書の提出の際には、被相続人の除票または戸籍の附票・申述人の現在の戸籍謄本(3か月以内のもの)・被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本・印紙800円分・郵便切手を提出しなければなりません。郵便切手の金額は、家庭裁判所により異なるので事前に確認しましょう。なお、第二順位の相続人(直系尊属)や第三順位の相続人(兄弟姉妹やその代襲相続人)が相続放棄の申述をする場合には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・先順位の相続人について死亡の記載のある戸籍謄本も提出しなければなりません。

家庭裁判所による書面照会などによる審理が終了すると(1か月ほどかかります)、申述を受理する場合には、申述人に「相続放棄申述受理通知書」が送付されます。相続放棄の申述が受理されると、申述人は初めから相続人とはならなかったものとみなされます。この相続放棄の申述の受理について、不服のある者は(債権者など)、通常の訴訟手続において、その効力の有無などを争うことができるとされています。受理を却下する審判に対しては、申述人は2週間以内に即時抗告をすることができます。

相続放棄がなされれば確定的に効力が生じます。そのため、たとえ熟慮期間内であったとしても、撤回することができません。ただし、成年被後見人がした相続放棄・被保佐人が保佐人の同意を得ることなくした相続放棄・詐欺や強迫による相続放棄などは取り消すことができます。この場合には、家庭裁判所に申述しなければなりません。

(司法書士・行政書士 三田佳央)