(1) 親族関係の発生
特別養子縁組が成立すると、その成立の日から、養子と養親との間に法律上の親子関係が成立します。そのため、養子は養親の氏を称することになります。また、養子は養親の親権に服することになります。
それだけでなく、養子と養親の血族との間にも親族関係が生じます。これを法定血族関係といいます。したがって、養親の子とは兄弟姉妹に、養親の兄弟姉妹は伯叔父母(おじ・おば)となります。法定血族関係が成立することにより、親権・扶養・相続権が発生します。法定血族関係は、自然の血族関係と同一の効果を生ずるからです。
(2) 実父母との親子関係の終了
また、特別養子縁組が成立すると、その成立の日から、養子と実父母との間の法律上の親子関係が終了します。実父母の血族との間の親族関係も終了します。親権・扶養・相続権などすべて消滅します。
(3) 戸籍の記載
特別養子縁組の成立の審判の確定後10日以内に、養親は戸籍上の届出をしなければなりません。その後の戸籍上の手続は次のとおりに行われます。
①実父母の戸籍から除籍されます。
②実父母の本籍地で、その子の単独の戸籍が編製されます。
③子は②の戸籍から養親の戸籍に入籍します。②の戸籍は在籍者が誰もいない戸籍として除籍となり、除籍簿として保存されます。②の戸籍の謄本等を第三者が請求することは禁止されています(養子本人のみが請求できます)。
④③の戸籍の養子の身分事項欄に「年月日民法817条の2による裁判確定」と記載されます。また、養子の父母欄には養父母の氏名が記載され、父母との続柄欄には「長男」「長女」「二男」「二女」と記載されます。
①~③の手続により、①の戸籍から③の戸籍を直接たどれないようにし、また、③の戸籍から①の戸籍を直接たどれないようにして、養親子の過程の平穏が第三者によって妨害されることを防ぐことができます。
④の記載によって、養子に実父母を知る機会を保障しています。また、養父母が唯一の法律上の親であることを示すとともに、続柄の記載による差別を防いでいます。
このように、特別養子縁組の戸籍は、養子であることを秘密にする制度ではありません。養子の自己の出自を知る権利を保障するために、養子の②の戸籍だけでなく、①の戸籍の謄本の交付請求が可能とされています。
(4) 離縁の制限
① 離縁の制限の趣旨
特別養子縁組の離縁は、例外的な場合にのみ認められているにすぎません。これは、特別養子縁組は、未成年者の養育のために養子の地位を安定させることを目的とした制度だからです。
② 離縁の要件
家庭裁判所は、下記のいずれにも該当する場合において、養子のため特に必要があると認めるときは、特別養子縁組の当事者を離縁させることができます。
(ア) 養親による虐待・悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
(イ) 実父母が相当の養育をすることができること。
これは、養親による養育が不適当な場合は、子の利益のために他への養子縁組をさせることが考えられますが、実父母の養育が可能な場合には、実父母との親子関係を回復させた方がよいと考えられたからです。
③ 審判の申立て
家庭裁判所に対し、離縁の審判の申立てをすることができるのは、養子・実父母・検察官です。養親による申立てが認められていないのは、特別養子縁組の離縁は、子の利益のための例外的な制度だからです。
④ 離縁の効果
特別養子縁組の離縁が成立すると、その日から、養子と養親との間の親子関係が終了し、養子と養親の血族との間の親族関係も終了します。
また、養子と実父母との間の法律上の親子関係が復活し、養子と養親の血族との間の親族関係も復活します。それとともに、養子は縁組前の氏を称することになります。もっとも、一定の要件を充たせば、縁組の際の氏を称することができます。
⑤ 戸籍の処理
特別養子縁組の離縁の申立てをした者は、その審判が確定した日から10日以内に、その審判の謄本を添付して、離縁の届出をしなければなりません。申立てをした者が期間内に届出をしないときは、養親も離縁の届出をすることができます。
離縁の届出がされると、養子は、実父母の戸籍に入るのが原則です。ただし、その戸籍がすでに除かれているとき・養子が新戸籍編製の申し出をしたときは、新戸籍が編製されます。
(司法書士・行政書士 三田佳央)