共同根抵当権の性質と設定登記の実務

根抵当権とは、一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額を限度とする担保物権です。特定の取引関係にある当事者間で設定されることが多い担保物権です。根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を担保するため、当事者間で一定の範囲に属する特定の債権が発生し、その後、その債権が弁済等により消滅しても、根抵当権は消滅せず、その後に発生する特定の債権についても、一定の範囲に属するものであれば、担保されるからです。

一定の範囲に属する不特定の債権を担保するため、数個の不動産について根抵当権を設定することがあります。これには2種類あります。一つは、それぞれの不動産について極度額まで優先弁済を受ける権利を持つもので、これを累積根抵当といいます。数個の不動産を担保する根抵当では、この累積根抵当が原則となっています。もう一つは、数個の不動産の全体として一個の債権を極度額まで優先弁済を受ける権利を持つもので、共同根抵当といいます。共同根抵当を設定するには、その設定と同時に、同一債権の担保として共同根抵当権の設定登記をすることが必要です。

累積根抵当の場合は、それぞれの不動産について、極度額まで優先弁済を受けることができるのに対し、共同根抵当の場合は、各不動産の価額に応じて按分して配当を受けることになります。このように、累積根抵当と共同根抵当では、その性質が異なるため、共同根抵当権の設定登記を申請する際に、登記の目的は「共同根抵当権設定」としなければならず、また、その登記申請に添付する設定契約書には、「共同担保として設定する」旨の文言が必要です。登記の目的について「共同」の文言や、設定契約書について「共同担保として」の文言が抜けていると、その根抵当権設定登記申請は補正の対象とされず却下される場合がありますので注意が必要です。

(司法書士・行政書士 三田佳央)