相続と登記に関する法改正について3(遺言2)

Aが死亡し、相続人として配偶者Bと子CとDがいて、Aは死亡当時、甲土地を所有していました。Aは、「甲土地をDに相続させる。」旨の遺言を残していた。ところが、Dへの所有権移転登記がされる前に、Cが法定相続分に基づく相続登記を申請し、それに基づいてBCDの共有名義の所有権移転登記がされました。ついで、Cが甲土地の持分権をEに売却して、それに基づくEへの所有権移転登記がされました。DはEに対して、真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続きを請求することができるでしょうか。

特定の相続財産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言の効力について、最高裁の判例は、特段の事情がない限り、遺贈と解すべきではなく、遺産分割方法を定めた遺言であり、他の共同相続人もこの遺言に拘束されるため、そのことは、登記なくして第三者に主張することができるとしています。その結果、甲土地は、Aが死亡した時に直ちにDに相続され、Cは、甲土地について、無権利者ということになります。したがって、Eも無権利者であるということになり、Dは、Eに対して、真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続きを請求することができることになります。これが平成30年改正前の扱いです。

平成30年の民法改正によって、相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分については、登記をしなければ、第三者に主張することができないことになりました。Dによる甲土地の取得は、Aから相続したことによるものなので、この改正法が適用されます。その結果、Dは、甲土地について、遺言に基づく登記をしなければ、その事実をEに主張することができないので、Eに対して、真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続きを請求することができないことになります。このことは、遺言によって、法定相続分と異なる相続分が定められていた場合も同様です。

このように、平成30年の法改正によって、従来の判例が変更されたことになります。相続登記をすることがより重要視されたといえるのではないでしょうか。まだ、相続登記をされていない方は、早めに相続登記をされることをお勧めします。まずは、司法書士や行政書士などの専門家に相談されると良いでしょう。

(司法書士・行政書士 三田佳央)