不動産の共有関係を解消する方法として、共有持分買取権を行使するという方法があります。各共有者は、その持分に応じて、管理の費用を支払う義務その他共有物に関する負担を負っていますが、共有者の1人がその義務を履行しないときは、他の共有者は、その共有持分を強制的に買い取ることができます。これが、共有持分買取権の制度です。
この制度は、共有者の1人が管理の支払義務等を1年以内に履行していない場合に、活用できます。共有持分買取権を行使するには、他の共有者が、買取の意思表示を相手方となる共有者に通知します。実務では、通常、内容証明郵便にて通知します。買取なのでその持分の対価を相手方に支払う必要があります。これで、共有持分の買取自体は完結しますが、その事実を第三者に主張するには、登記をしなければなりません。
この登記手続は、買取請求権を行使した共有者と相手方となる共有者の共同申請となります。そのため、相手方となる共有者の協力が必要です。相手方となる共有者が協力に応じない場合には、訴訟提起をすることになります。登記の目的は「持分全部移転」となり、原因は「民法253条2項による取得」になると思われます。登録免許税は、固定資産評価額に持分割合を乗じた金額の1000分の20です。
共有持分買取権を行使してその共有持分を取得した共有者には、不動産取得税が課せされると考えられます。また、相手方となる共有者には、譲渡所得税が課せられると考えられます。不動産の売買と同様に考えられるからです。
このように、共有持分買取権は、共有者としての義務を果たさない他の共有者を、共有関係から離脱させることができる有効な手段ですが、その共有者が協力に応じないなど紛争に発展する可能性があるので、このような共有者のことでお困りの方は、まず、専門家に相談されると良いでしょう。
(司法書士・行政書士 三田佳央)