不動産に関する共有関係の解消の実務6

共有物分割に関連した制度ですが、共有関係の解消に活用できる制度があります。それは、共有者の1人が他の共有者に対して債権を有するときは、共有物分割に際して、債務者に帰属すべき部分をもって、その弁済に充てることができるというものです。例えば、A・B共有(ともに持分2分の1)の甲土地(150㎡)を分割する際に、AがBに共有に関する債権を有しています。持分割合に応じるならば、AとBともに75㎡の単独所有者とする現物分割をすることができます。この場合に、AがBに対して共有に関する債権を有しており、その価額が甲土地の25㎡に相当するものであれば、Aを100㎡の単独所有者とし、Bを50㎡の単独所有者とすることができます。

これは、共有に関する債権を、分割に際して、債務者に帰属すべき部分について代物弁済を受けるものといえます。また、共有持分買取権に類似した制度といえますが、債務者が義務を履行していないことについて1年の経過は必要ありません。

他の共有者に有する債権とは、共有物の管理その他の負担についての立替金債権をいいます。共有物の管理その他の負担についての立替金債権を有する共有者は、共有持分買取権を行使することができるほか、分割に際して、代物弁済を請求する権利を行使することができることになります。

上記の権利を行使した事実を第三者に主張するには、登記をしなければなりません。その登記手続は、債権者である共有者と債務者である共有者が共同で申請しなければなりません。登記の目的は「共有者持分全部移転」、原因は「共有物分割」となります。登録免許税は、持分に応じた分割ではないことから、固定資産評価額に持分割合を乗じた金額の1000分の20となります。

債権者である共有者の課税に関してですが、譲渡所得税については、持分に応じた分割ではないことから、原則として、課税されるのではないでしょうか。不動産取得税についても同様に考えられます。

なお、債権者が、代物弁済を受けるため必要があるときは、債務者に帰属すべき部分の売却を請求することができます。

(司法書士・行政書士 三田佳央)