不動産に関する共有関係の解消の実務4

不動産の共有関係を解消する方法として、その有する共有持分を放棄することが考えられます。共有持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します。帰属の仕方は、共有者に平等に帰属するのではなく、共有者の持分に応じて帰属します。例えば、甲土地をABCが共有しており、持分はAが10分の5、Bが10分の3、Cが10分の2である場合に、Aがその持分を放棄すると、その持分はBに10分の3、Cに10分の2が帰属することになります。

持分放棄をするには、他の共有者にその持分を放棄する旨を通知することによってします。証拠を残すために、内容証明郵便にて通知すると良いでしょう。他の共有者の承諾は不要です。ただ、他の共有者による持分権の取得は、登記をしなければ、この事実を第三者に主張することができません。不動産の共有持分を他の共有者が取得することは、不動産に関する物権変動といえるからです。

共有持分を放棄する登記手続は、持分全部の移転登記であり、持分を放棄した者と他の共有者との共同申請としてすることになります。持分放棄は他の共有者の承諾が不要な単独行動ですが、登記手続をするには他の共有者の協力が必要となります。

持分放棄をすることにより、課税されることがあります。持分放棄をすると、他の共有者には贈与税が課税されます。持分放棄は贈与ではないのですが、税法上はみなし贈与として扱われ、持分取得者である他の共有者に贈与税が課せられます。この点、注意が必要です。

このように、共有持分放棄は、不動産の共有関係から離脱する手段の一つで、実務では活用される場面が少なくないですが、他の共有者の協力が必要であり、その共有者に贈与税が課されるので、その辺りの対策を講じる必要があります。その点も含めて共有関係の解消を検討する際には、是非、専門家にご相談ください。

(司法書士・行政書士 三田佳央)