自筆証書による遺言書の保管について

遺言書を残す方法として、自分で遺言書を作成する方法(自筆証書遺言)と公証役場の公証人によって遺言書を作成する方法(公正証書遺言)があります。自筆証書遺言の場合は、方法が簡単で、費用がかからないというメリットがあります。その反面、紛失、偽造の可能性が小さくないというデメリットがあります。また、遺言者が亡くなって、遺言書を執行してその内容を実現するには、家庭裁判所で遺言書の検認手続きをしなければなりません。検認手続きを経ていない遺言書では相続手続きができません。そのため、遺言書を執行するまでに時間がかかります。このような、自筆証書遺言の不都合を解消するために、平成30年の法改正によって、「法務局による遺言書保管制度」が創設されました。

この制度を利用するには、自筆証書遺言を作成した遺言者が、遺言書保管所に遺言書の保管を申請する必要があります。遺言書保管所とは、遺言者の住所地・本籍地、所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局のことです。保管の申請をする遺言書保管所を決めたら、申請書を作成します。作成したら遺言書保管所に保管の予約をします。遺言者は、予約した日時に、①遺言書、②申請書、③住民票(本籍の記載があり、作成後3か月以内のもの)、④顔写真付の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書、パスポート等)、手数料(遺言書1通につき3,900円。収入印紙として納付します。)を持参して、遺言書保管所に出向きます。必ず遺言者本人が出向かなければならず、代理人による出頭は認められません。そのため、自ら遺言書保管所に出向くことができない人は、この制度を利用することができないことになります。保管の申請が終わると保管証が交付されます。遺言書の原本は、遺言書保管所で保管されるため、紛失や偽造の可能性はありません。

遺言者が亡くなったときは、相続人、受遺者、遺言執行者等は、遺言書保管所に対して遺言書情報証明書の交付を請求します。遺言書情報証明書とは、遺言書の原本の内容を証明した書面のことです。遺言書情報証明書は全国のどの遺言書保管所でも、交付の請求をすることができます。遺言書情報証明書の交付の請求をするには、請求書を作成して、遺言書保管所に交付請求の予約をします。予約した日時に、請求書、本人確認書類、手数料(1通につき1,400円。収入印紙にて納付します。)を持参して、遺言書保管所に出向いて、遺言書情報証明書を受け取ります。なお、遺言書情報証明書は、郵送でも交付の請求をすることができます。

この遺言書情報証明書を利用して相続手続きを進めることになります。この場合には、遺言書の検認手続きは不要です。そのため、遺言の執行による相続手続きを早期に進めることができます。