土地の所有者が亡くなったら、相続人の名義にするため相続登記をすることになります。しかし、実際には、土地の所有者が亡くなっても、相続登記がなされないことがあります。これは、相続登記をすることは義務ではないため、相続人が、相続登記をしなくても不利益が少ないと考えたり、費用を負担したくないと考えたりしていることが要因といえます。また、遺産である土地の活用について関心やニーズが低くなっているという実情もあります。このように、相続登記がなされないと、相続人の1人が亡くなると、相続人が増えてしまい、さらに相続登記をするのに負担が増えてしまいます。このような状況が続くと、不動産登記簿により土地の所有者を調査することができなかったり、所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が取れなくなるおそれがあります。
土地の所有者が不明だと、以下のような不都合が生じます。①所有者の調査に多大な時間と費用がかかる、②土地が管理されず放置されてしまう、③共有者の一部の所在が不明の場合には、土地の管理や利用についての合意をすることが困難となってしまう、などです。このような状況が解消されないと、土地の取引に支障が生じるため土地の利用・活用を阻害してしまいます。また、土地の管理がされず荒れてしまい、隣接する土地に悪影響が発生するおそれもあります。
そこで、所有者が不明な土地を解消すべく、令和3年に下記の法改正がなされました。①不動産登記法の改正による相続登記や住所変更登記の義務化、②土地を手放すための制度として、相続土地国庫帰属制度の創設、③民法改正による土地利用に関する規律の見直しです。