成年後見人が適切に本人の財産管理をするためには、本人の収支の状況を把握する必要があります。成年後見人に就任してから1か月以内に、財産目録を作成して、家庭裁判所に提出しなければならなりませんが、その際に、収支予定表も併せて提出することになります。
まず、本人から預かった通帳や請求書等から収入または支出の相手先や内容を確認します。例えば、公共料金、保険会社の保険料、携帯電話料金、各種介護サービス利用料などです。次に、その相手先に電話したり通知を出したりして、収入または支出の内容や未払金の有無を調査します。その際に、請求書等の送付先を成年後見人の住所に変更します。
この調査は、中部電力や市町村の水道お客様センターなど、電話一本で完了するところもあれば、NTTなど、後見の登記事項証明書(または審判書と確定証明書)を添付して書面で通知しなければならないところもあるため、事前に問い合わせて確認しておくと良いでしょう。登記事項証明書の期限が定められていることもありますので、その点も確認が必要です。なお、かんぽ生命など、送付先の変更に応じてもらえないこともあります。
市町村役場でも必要に応じて収入または支出の調査と送付先の変更をします。例えば、後期高齢者医療保険、介護保険、固定資産税などです。滞納金があれば、納付方法について協議して計画的に納付することになります。送付先の変更をしておくと、成年後見人の住所に各種納付書や各種手続きの案内などが届くようになりますので、漏れなく各種納付や各種手続きをすることができます。なお、送付先の変更の手続きは、各担当窓口ごとにしなければならない役場が多いので、場合によっては成年後見人の負担が大きくなってしまうことが懸念されます。送付先の変更の手続きをするには、登記事項証明書(または審判書と確定証明書)、成年後見人の身分証明書が必要です。
年金を受給している場合には、国民年金と厚生年金であれば、管轄の年金事務所で成年後見人の届出をします。この届出をすることによって、年金に関する通知を成年後見人が受け取れるようになります。この手続きをするには、届出書、登記事項証明書(または審判書と確定証明書)、成年後見人の身分証明書が必要です。企業年金や共済年金を受給している場合には、それぞれ企業年金連合会や各共済年金で同様の届出をします。この届出は郵送でもできます。 本人が長期入院をしているような場合には、成年後見人が本人の郵便物を確認できるようにするため、郵便局で転居届を出して本人宛の郵便物が病院などに届くようにします。転居届の期間は1年間なので、必要があれば再度転居届を出します。それでも、本人の郵便物の管理が十分にできない場合には、家庭裁判所で手続きをして成年後見人に郵便物を届けさせることができます。