成年後見人の実務(財産管理)3

成年後見人に就任したら、速やかに財産調査に取り掛かります。1か月以内に財産目録を作成して家庭裁判所に提出することになっています。財産目録については、裁判所のウェブサイトに掲載されているものを使用することもできますが、決まった様式があるわけではありません。財産内容が把握できるものを作成すれば足ります。

財産の状況が複雑な場合などには、家庭裁判所の許可を得てその期間を伸ばすことができます。ただし、財産目録の作成が終わるまでは、成年後見人は、急迫の必要がある行為をする権限しか認められません。急迫の必要がある行為とは、例えば、請求権のような債権を保全するための裁判手続き、緊急を要する家屋の修繕などです。このように、財産目録作成前の権限は限定的なので、速やかに財産調査に着手して財産目録を作成するようにしましょう。

財産目録を作成して家庭裁判所に提供したら、今後の財産管理の方針を立てます。

現金払いの支払いがあれば、口座から引き落とされるように手続きをします。引き落とされる口座が複数ある場合には、一つの口座にまとめるなど管理しやすいようにします。口座引き落としにしておけば、支払いを忘れることがありませんし、収支の状況が通帳に記載されるので収支の管理や集計しやすくなります。

預貯金口座を多数所持している場合には、使用していない口座を解約するなどして所持する口座の数を少なくしておくと、収支の管理や集計がしやすくなります。

高額な預貯金口座がある場合には、すべて普通預金口座で管理するのではなく、収支予定表を見て、本人の生活支援に必要な金額以外は定期預金に切り替えて管理しましょう。 多額の現金をそのまま管理していると紛失のおそれがあるので、切手代や交通費など少額の現金は小口現金として成年後見人の手元に保管して、それ以外の現金は預貯金口座に預けます。小口現金は現金出納帳に収支を記録して管理します。