成年後見人の実務(財産管理)1

成年後見人の職務には、財産管理と身上監護があります。その一環として、成年後見人に就任したら、まず本人の財産を調査して収支を把握するところから始めます。成年後見人は、就任してから1か月以内に財産目録を作成して家庭裁判所に提出しなければならないからです。

成年後見人に就任したら、本人の通帳を預かります。その後、その通帳を持参して金融機関に出向いて成年後見人の登録をします。この登録をしますと、そのときに成年後見人が届出をした印鑑を使用して金融機関での取引(現金の出し入れや振込みなど)をすることになります。そのため、それまで使用していた届出印は使用できなくなり、また、従来使用していたキャッシュカードも使用できなくなります。金融機関によっては代理人用のキャッシュカードが発行されます。代理人用のキャッシュカードが発行されない場合は、窓口で取引をすることになります。代理人用のキャッシュカードが発行される金融機関は少ないです。取引のある店舗以外の窓口での取引が可能かどうかは金融機関により異なります。可能でない場合には、取引ごとにその店舗に出向かなければなりません。なお、金融機関によっては、口座名義が「本人 成年後見人 ○○○○」と変更されます。

この登録の際には、通帳の他に、後見開始の審判書と確定証明書、免許証等の身分証明書、実印、印鑑証明書を持参します。実印と印鑑証明書を忘れずに持参しましょう。

本来であれば成年後見人が登記された登記事項証明書を金融機関に提示するところですが、就任直後は後見開始の登記が完了していないため登記事項証明書を取得することができませんので、後見開始の審判書と確定証明書の原本を提示します。確定証明書は、後見開始の審判が確定してから、家庭裁判所に請求書と印紙150円提出すると取得できます。確定証明書を取得する際には請求書と請書に押印する必要があるため、印鑑を持参すると良いでしょう。審判確定日については、事前に家庭裁判所に問い合わせて確認することができます。

なお、金融機関によっては、届出印を成年後見人の実印と別の印鑑にすることができます。

このように、成年後見人の登録については、金融機関ごとに取り扱いが異なりますので、事前に金融機関に問い合わせて確認しておくと良いでしょう。

成年後見人の登録をするときに、併せて預かった通帳以外に取引がないかその場で確認します。ゆうちょ銀行の場合は、一度本部に照会してから、後日照会結果が書面にて通知されます。その結果、把握していなかった取引が判明したら、通帳を再発行するとともに、必要に応じて取引履歴明細書や残高証明書を取得します。把握している取引があっても通帳を紛失していれば再発行をします。

このようにして、金融機関での財産調査を行うとともに、成年後見人として金融機関で取引ができるようにします。金融機関で成年後見人の登録をすると、成年後見人しか金融機関での取引ができませんので、例えば、本人の親族が従来使用していたキャッシュカードを使用して、無断で現金を引き出すことを防ぐことができます。