平成30年に施行された「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」に基づいて、長期間にわたり相続登記がされていない土地について、国がこの状況を解消する措置を講ずることとなりました。
具体的な内容としては、まず、法務局が管轄区域内の土地につき所有権の登記名義人が死亡しているか否かの事実を調査します。その調査の結果、その土地につきその所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記がされていないと認めるときは、法務局が、その所有権の登記名義人の法定相続人を探索します。そのうえで、法務局は、職権で、長期間相続登記がされていない旨などを、所有権の登記に付記します。
また、法務局による調査によって判明した法定相続人に対して、相続登記の申請を勧告し、その相続登記を申請するために必要な情報を併せて通知を送付します。これが、「長期間相続登記等がされていないことの通知」です。
この通知を受けた法定相続人は、この通知に記載されている情報を基に、法務局に対して、法務局が探索して得た法定相続人に関する情報の閲覧を求めます。
そして、その法定相続人に関する情報に基づいて、法定相続人と遺産分割協議等をして、相続登記の申請をすることになります。
この制度の特徴としては、法務局が所有権の登記名義人の法定相続人を探索し、その情報を活用して相続登記を申請することができるので、法定相続人が改めて戸籍を収集して法定相続人を調査する必要がないこと、法定相続人間における遺産分割協議等やその相続登記の申請については、この制度においては特段の手当てはされていないことです。すなわち、法定相続人に関する情報は法務局が探索して得た情報を活用することはできるが、遺産分割協議等や相続登記の申請については、原則どおり、自ら行うか、弁護士や司法書士などの専門家に依頼して進めるかということになります。ただ、この通知を受けたことをきっかけとして、長期間されていない相続登記の手続が進められていくことになるでしょう。
「長期間相続登記等がされていないことの通知」を受けたときは、「どうしたらいいんだろう?」と思われる方が少なくないと思われます。そんな方は、一度、弁護士や司法書士などの専門家に相談されるとよいでしょう。
(司法書士・行政書士 三田佳央)