令和3年の法改正により、相続または相続人が遺贈により取得した土地を国庫に帰属させることができる制度が創設されました。これが、相続土地国庫帰属制度です。この制度により、相続や遺贈によって望まない土地を取得した相続人から、土地の管理についての負担から解放し、所有者不明土地が発生することを抑制することが期待されています。なお、ここにいう、所有者不明土地とは、相当な努力を払ってもなおその所有者の全部または一部を確知することができない土地をいいます。
土地の所有者が、相続土地国庫帰属制度を利用して相続または遺贈により取得した土地を国庫に帰属させるためには、法務大臣に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請しなければなりません。ただし、この申請をすることができるのは、その土地を相続または相続人に対する遺贈により取得した者に限られます。これは、相続または相続人に対する遺贈により取得した土地については、その土地を利用する見込みもその土地から利益を受けることもないにもかかわらず、相続人が処分することもできずにやむを得ず所有し続けていることが少なくないことから、所有者不明土地の発生を抑制するため、国が引き受けて国民全体の負担で管理する必要性が高いと考えられるからである。
土地を遺贈により取得した場合には、遺贈を受けた者が相続人でなければ、相続土地国庫帰属の申請をすることができません。これは、相続人が遺贈を受けた場合には、遺贈を放棄したとしても、相続放棄をしない限り、結局その土地の所有権を取得することとなり、やむを得ず土地を所有し続けていることが少なくないからです。
このことから、相続放棄をしたうえで遺贈の承認をした者は、相続土地国庫帰属の申請をすることができません。これは、相続放棄をした者は、初めから相続人ではなかったものとみなされるため、その遺贈は相続人に対するものではないことになるからです。
(司法書士・行政書士 三田佳央)